先日Pixiv Fanboxというクリエイター支援サービスが誰にでも解放されました。
このサービスでは少ない手数料で毎月一定の金額をクリエイターに送ることができます。

同様のサービスはEntyやファンティアなどありましたが、Pixivは元々のユーザーが多いのと、手数料が5%(2018年中はキャンペーンで0%)+決済手数料3.6%でクリエイターに9割以上の取り分が確保されているという理由で注目を浴びて沢山の絵師が一斉にファンボックスを開設しました。

ちなみに私も開設しました。

開設しておいてなんですが、これでこれからは沢山のクリエイターが十分な支援を受けられるようになるかというと、そういうイメージはあまり湧きません。

 

ファンボックスのお陰で支援の窓口がみんなに解放された事自体は意味があります。
これによって純粋にクリエイターを応援したかったパトロン的な人が簡単にお金を振り込めるようになったからです。

しかし、純粋にクリエイターを支援してくれるパトロン気質な人は世の中にそんなに多くないでしょう。

 

他の大多数の投げ銭ユーザーはやはりある”見返り”を求めています。
では投げ銭の見返りとしてコンテンツを用意すればそれでいいのでしょうか?

そのためにファンボックスでは支援者限定コンテンツを投稿することができます。
しかしそれだと従来通りの電子書籍の売買とおなじです。
投げ銭ユーザーは別にそういう見返りが欲しくて投げ銭するのではないです。
「モノからコトへ」と言われているように、最近のユーザーはモノなんて求めてません。

投げ銭ユーザーが欲しい見返りは、「物語に参加する権利」です。

 

キックスターターなどのクラウドファンディングにバックした事はありますか?
プロジェクトにバックすると進捗状況がこまめに報告されてきます。

バッカーはプロジェクトの成果物の製品が欲しいというのもありますが、自分たちのお金でプロジェクトが始動して、その進捗状況が上がってくるとそれが自分事に感じられてワクワクします。
クラウドファンディングはプロジェクトに一枚噛む権利を売っているという見方もできます。

 

Youtubeライブにはスーパーチャットという投げ銭機能があります。
ユーザーは投げ銭しなくてもコメントを打って双方向参加する事ができますが、もっとこのライブにコミットしたい!という人はスーパーチャットを投げます。

これもライブという物語にスパチャで参加するという構造です。

 

「投げ銭ある所に物語あり」と言っていいでしょう。
(物語ってのはフィクションのドラマとかそういうのではなくて、現実で今起きている文脈の事です)

そういう意味ではファンボックスはあまり物語を感じられない気がします。
ポチッと押すとあとは坦々と毎月お金が引き落とされて相手に送られるだけ…お金は単なる数字に還元されて、そこには物語も絆も感じられない。

本来そこにあるべき物語は、素敵なイラストを描いているクリエイターが、生活に困ってて、このままでは満足に創作活動を行えない…そこに支援者のみなさんが助けを出して、生活を支えてくれたおかげでクリエイターは素晴らしい作品をたくさん作り続ける事ができました。めでたしめでたし
こういうのでしょう。

クラウドファンディングはこのようなストーリーがシステム自体に組み込まれてますが、ファンボックスでこういった物語を醸し出すには工夫が必要そうです。

 

ある意味すごい高額な投げ銭の例を紹介します。

去年にVRソーシャルネットワークサービスの先駆けであるAltspaceVRが閉鎖するという話が持ち上がりました。

有力サービスだと言われていたAltspaceが閉鎖なんて…VRの先行きは暗いのか?なんて空気が生まれました。

そんな時、Oculus創業者のパルマー氏がAltspaceVRを救済する事を発表しました。

VRブームの火付け役がVRソーシャルネットワークサービスを助ける…これなんかはかなりわかりやすい物語ですよね。

わかりやすい物語はそれだけで話題性を帯びます。
物語は人々の注目を集めるし、人々の注目を集めた物事は物語を生むとも言えます。

 

別の例を挙げますが、
この前twitterでTODOさんのロボット作品がバズりました。

 

この作品を絶賛する人は一杯いましたが、その後TODOさんからは仕事への繋がらなさや生活の苦しさの胸の内が語られました。

これを見てTODOさんの作品の購入を表明する方たちが現れました。

支援してくれる人が現れて、収入が得られてめでたしめでたしというわけですが、GOROmanさんの話はこれだけで終わらずもう一捻りあります。

なんと飛行機のフライトの間に本を書き上げて電子書籍で出版しました。
そしてその本の売り上げをTODOさんのロボットの購入費に充てると発表しました。

GOROmanさんがやった事は、まずクリエイターを救済する素敵な物語を作り出して大きな話題性を生み、それからみんなにその物語に参加する権利を一口千円に小分けしたという事なんです。
すごいアイデアです。
お金は自分のためじゃなくて他人のために集める方が集まりやすいという性質も踏まえています。

GOROmanさんは投げ銭のこうした性質を完全に理解しているのだと思います。

 

さて、ここまで見ていくとお分かりになる通り、人は突き詰めるとバズッてるところに投げ銭したいのです。
だからファンボックスとかじゃなくて、バズッてて注目が集まってるその場所でその瞬間に投げ銭したいという事です。

そこんとこ完全に抑えたサービスが実はあります。

なんと中国版twitterのWeiboでは、バズッてる人に直接投げ銭できるそうです!
今までの話を総括すると、投げ銭が集まりやすい究極の形はこれでしょう!

twitterに上がってる素敵漫画とか読んでるとRTふぁぼだけじゃ足りない!って気持ちになったりしますよね。
そんな時にパッと投げ銭できれば…
TODOさんの話もバズッた段階で投げ銭が殺到してたら全て解決だったに違いありません。
twitterは早く投げ銭機能実装してくれ!