サイモン・シンの「フェルマーの最終定理」という本を読みました。

この本にはフェルマーの最終定理に関わった人たち、古代ギリシャから1993年までのドラマが描かれています。
最初の方のピタゴラスの定理あたりは話が簡単なのでちゃんと数学的説明がなされてて、この辺は数式のせいで読んでて眠かったんですが、後半は数学的に高度すぎて具体的な証明方法などは本文からすっ飛ばされて、人間ドラマがメインになっていくので後半はかなり熱中して読めました。
面白かったです。

本の内容にはここであまり触れるつもりはないのですが、チャンスの掴み方について思うところがあったのでそれを書きます。

300年以上解かれていなかった数学の謎、フェルマーの最終定理の証明を1993年に達成したのはワイルズさんでした。
ワイルズさんは10歳の時にフェルマーの最終定理について知り、魅了され、絶対に解いてやるぞと決意しました。
ワイルズさんが証明を解けたのは、子どもの頃から、夢を諦めないでトライし続けたからでしょうか?
僕は少し違うと思います。

ワイルズさんみたいにフェルマーの最終定理を解くぞ!と決意した人は山ほどいたでしょうし、300年間には精力的に問題に取り組んだけど解けなかった人もたくさんいます。
諦めずにやり続ければ必ず叶うというものでもなさそうです。

ワイルズさんは別に10歳の決意から人生の全てをフェルマーの最終定義に捧げ続けたというわけではありません。
ワイルズさんは子どもの頃に徹底的に証明に挑戦しましたが、そもそもその時点では証明を解くための道具は揃ってませんでしたので、一旦諦めました。
その後ワイルズさんは数学者になるにあたって、解いても社会の役に立たない(と思われていた)フェルマーの最終定理への挑戦は保留して、もっと実用的な数学を専門にすることにしました。

それから大分経って、たまたま友達からフェルマーの最終定理の証明がかなり進展しているという噂を聞いたワイルズさんは機は熟したとばかりに再び8年間フェルマーの最終定理に取り組んで、証明する事ができました。

ワイルズさんの証明では当時の最新の数学理論が駆使されていました。
それらの道具が揃ってなければ解くことはできなかったわけです。(揃っていてもワイルズさん以外には解けなかったかもしれませんが)
だからワイルズさんは解くための絶好のタイミング、絶好のチャンスを掴み取ったからこそ定理が解けたと言えます。

同じ噂を聞いても他の人なら聞いてもへえ~と言うだけだったでしょうが、定理を解くことが夢だったワイルズさんはそれをチャンスだと認識して、掴み取ることができました。
ワイルズさんがチャンスを掴めたのはチャンスに対する心の準備ができていたからでしょう。

私がかつて勤めていたゲーム会社で上司から聞いたのは、プログラマだろうがデザイナーだろうが企画案の一つ二つ常に見せられるように用意しておくといい事があるという話です。
普段の仕事では中々自分の企画のゲームを作れる機会なんてありそうにないとしても、偉い人が何か面白い企画無いかな~って言ってたり、社内で企画募集があった時、そんな瞬間にスッと自分の企画を提出できればそれが実現するチャンスです。

もちろんその人にとって何がチャンスかはその人が何がしたいかによります。
漫画家志望ならどこかで漫画大賞の募集があった時にサッと応募できるように1本漫画を描いておくのが心の準備だと思います。
何か面白い物を撮りたいと思ってる人なら常にカメラを持ち歩いていれば、目の前に河童が現れた瞬間でもシャッターチャンスを逃しません。

チャンスがあるかないかは運しだいとか、チャンスがあっても掴めるかは運しだいな面もあるかもしれませんが、人生何十年も生きてると試行回数が大きくなり、確率的に死ぬまでには何度かは何かしらチャンスは訪れる可能性が高いです。
チャンスに対して心の準備をしていない人はそもそもそれがチャンスだと気付きません。
いつチャンスが来てもいいように心の準備をしておくとチャンスをチャンスだと見抜けるし、チャンスに対して即座に行動できるので、チャンスが掴めます。

ついでに言えばチャンスじゃなくても災害に対しても心の準備をしておくと実際にそれが起きた時に即座に行動できます。
今の事だけじゃなくて、未来について考えるのが大切だという話を聞きますが、未来に何が起こるかはわからないので、何が起きても対応できるように色々対策を仕込んでおくとよいという事ですね。