ところで世間では大メタバース時代に突入したらしいですね。

私は以前から「ゲームはマルチプレイヤー当たり前時代が来るぞ!」って散々言ってましたが、要するにそれがメタバースだったわけです。(適当
予言者と呼んでもらってもいいですが、まあ世の中の流れを見てたら当然予測できる流れだったので、予言では無く予測でした。

メタバース時代に伴って、猫も杓子もメタバース!メタバースとか連呼し始めたみたいですね。
フェイスブックが社名を「メタ」に変えてまでメタバースに入れ込む宣言をした(毎年1兆円をメタバースに投資するらしい)のをきっかけに、EpicGamesもメタバース!MiHoYoもメタバース!ディズニーもメタバース!パソナもメタバース!Dropboxもメタバース!とか言ってもはや意味不明な状態になってます。(フェイスブックより先にメタバース宣言してた企業も多いけど)

そんなにメタバースがやりたいならセカンドライフやりゃいいじゃんとか思いますが、まあそういう流れはさておき、さしあたってエンジニア諸氏の皆様が今抱えてる問題としては、会社の偉い人から「ちょっとサクッとメタバース作ってよ」とか無茶振りされて右往左往していらっしゃったりするのではないでしょうか。

あるいは、俺もメタバース作って一旗揚げるぞ!と野望を胸に燃えている個人開発者の方もいらっしゃるかもしれません。

まあこのブログのアクセス解析を眺めてるとそういう風潮を感じますね。

地味に毎日この記事へのアクセスとか多いし↓

そういうわけで、UE4やUnityでメタバース作る事になったらどうすればいいのか?について考えて整理してみたいと思います。

いくつかポイントになる要件が考えられます。

1.同じ部屋(世界)に何人接続できる必要があるのか?

2.アクションゲーム性があるか?

3.競技性があるか?

4.課金があるか?

これらの要素について見ていく必要があります。

話が長くなりそうな予感がしてきたので、これらの要素について一つずつ記事を書いていこうかなと思います。

まず今回の記事では、メタバースの同時参加人数について考えてみます。

同じ部屋(世界)に何人接続できる必要があるのか?

メタバースと言うと、なんか一つの世界に沢山の人数が入れそうなイメージがありますが、UnityやUE4でのゲームには同じ部屋に参加できる人数には限界があります。

実績ベースで言うと、UE4はフォトナで100人接続できてますし、UnityはFall Guysで60人接続していました。
私がこの前MLAPI(現在はNetcode for Gameobject)で実験したところ、キャラを同期するだけなら70人くらいは問題ありませんでした。

まあ普通にやるとこれくらいが上限人数となるわけです。

Unity VS UE4

UnityよりUE4の方が参加人数が多くできるのか?という話は、たしかにEpicは自分でUE4使ってフォトナを作る必要があったので、通信面でかなりチューンナップされてる分、Unityより人数が増やせるかもしれません。(たとえばUE4にはレプリケーショングラフが実装されており、細かい調整で通信帯域を節約できます。)
ただし、フォトナはマップが相当広いですから、同じ画面に大人数が存在する事はほぼありません。他人と出会うたびに戦闘になってどちらかが負ける形になりますし。ですからせいぜい画面には数人しか同時に映りませんから、通信負荷、描画負荷は間引きできます。
フォトナで100人が同じ場所に全員集合したら、負荷が高くなりすぎてマトモに描画できなくなる可能性はあります。
それに対して、Fall Guysでは最初の競技で60人全員が画面に映ってしまいます。これは描画負荷、通信負荷、処理負荷全ての面できびしくなります。
ですからUnityとUE4のどちらが多くの人数を参加させられるかどうかは何とも言えません。

ちなみにPhoton Fusion(Unityのみ対応)では高度な通信の最適化によりマルチプレイ同時参加人数は200人まで可能だと主張されています。

https://doc.photonengine.com/ja-jp/fusion/current/getting-started/fusion-intro

専用サーバー VS リッスンサーバー

さらに、フォトナもFall GuysもMLAPI実験の話も、これらは全て専用サーバーを用いた場合の話です。専用サーバ自身はゲームプレイしないため、グラフィックス描画などをスキップできるので、リッスンサーバー(ホストとゲストで接続する形)よりも収容人数を増やせます。リッスンサーバーだと人数上限は半分くらいに減るかもしれません。

例えば、ARKでは専用サーバならスペックによって30人とか70人収容可能ですが、リッスンサーバだと4人が上限です。しかもゲストはホストから余り離れた所には移動できない制限まであります。

PC VS スマホ

ここまでの話は基本的にゲーミングPCやコンソール(PS4やXBox)を対象に話してきましたが、スマホになると基本的にPCよりスペックが制限されるので、さらに話がキビしくなります。

しかもスマホは無線接続ですし、下手するとWi-Fiじゃなくてキャリア回線で接続してきたりするので、通信が不安定で、帯域も制限がかかります。

「フォトナはスマホでも動くじゃん」と思うかもしれませんが、アレはまあ奇跡みたいなものです。Fall Guysはスマホ対応していません。

VRSNSのVRChatはOculus Questに対応しましたが、アバターをQuestでも表示させたい場合は色々と制約が発生します。(1万5千ポリゴン以下、指定されたシェーダのみ、揺れ物なし、マテリアル2つまで、メッシュ2つまで、パーティクル不可、トレイル不可)

それに引き換え、バーチャルイベントプラットフォームのclusterはスマホ対応もしつつ、最近はアバターの制限はむしろ撤廃されました。

clusterのアバター制限が解放されました!

何故このような事が可能なのか?というと、おそらく高度な自動LOD生成システムのようなものが実装されたんじゃないかと思います。つまり、スペックの低いスマホ上では自動生成された低ポリモデルが表示される、みたいな仕組みと思われます。

最近のclusterは、スマホにもかかわらずユーザーのカスタムアバター(VRM)モデルが大量に表示されていて技術的にすごいです↓

ちなみにclusterでは同じ部屋に最大500人が参加できます。ただし、実際に表示されるのは50人で、51人目以降の人は自分のアバターが表示されないゴーストモードになります。自分はその場にいるものの、他の人からは見えてない状態という事です。

ちなみに、マーケット規模の話をすると、現在では世界人口の84%、つまり66.5億人がスマホを持っています。

https://www.bankmycell.com/blog/how-many-phones-are-in-the-world

それに比べて、家にパソコンがある人の割合は全世界で47.1%になります。つまり世界全体で見た場合、PCの市場はスマホの半分しかありません。
さらにちゃんとそれなりのゲームが遊べるスペックのPCは全体の1/3とか、それ以下かもしれません。

https://www.statista.com/statistics/748551/worldwide-households-with-computer/

ちなみに日本のスマホ普及率は86.9%、パソコン普及率は70%です。

というわけですから、まあなるべく大きなマーケットを狙うならやっぱりスマホ対応したいという話になりがちです。

VR VS 非VR

メタ(旧フェイスブック)のメタバースであるHorizon Worldsとかを見てると、メタバースって要するにVRなのか?とか思いがちですが、別にメタバースがVRでなければならないという事も無いでしょう。

VRChatはVRでも遊べますが、非VRモードでも遊べます。clusterも同様です。
バーチャルキャストは元々「VRでアバターになりきってニコ生放送をやろう!」みたいなアプリだったので、VR専用になってます。

VRは非VRよりも描画負荷が高くなります。何故なら右目用の画像と左目用の画像をそれぞれレンダリングする必要があり、しかも解像度もフルHDよりも高くて4k並みだったりします。
しかし、Oculus Riftが発売した2016年の頃は、VRといえばハイスペックなゲーミングPCに繋いで遊ぶしかありませんでしたから、低スペックPCやスマホは論外だったので、むしろ処理能力には余裕がありました。

ところが、最近ではメタのQuestのシェアがどんどん増しており、VRと言えばスタンドアロンHMDという風潮になってきています。

スタンドアロンHMDと言っても中味は大体Androidスマホと同じですから、PCVRと比べると性能は大幅に制限されます。

そういうわけで、自分のメタバースをVR対応しようと思ったらそれなりに厄介な事になる点に留意してください。要するにVRでは参加可能人数の上限は非VRより制限されるでしょう。
細かい話ですが、Android向けのビルドではWindows用のDLLで提供されてるライブラリとかも使えません。

「メタバースだから当然VR対応要るよね」ってだけで何となく対応するより、自分のメタバースにVRの必然性があるかどうかで考えてみるべきでしょう。
個人的に考えるVRならではの魅力は、たとえばVR内で鏡を表示すると、自分の身体を動かした通りに自分のアバターが動いているのが見えますから、その魅力的な外見のアバターが自分自身であると強烈に実感できます。例えば自分がアニメの美少女に”なれます“。これは非VRでは味わえない、VRならではの体験です。

VRChatを非VRモードで遊ぶと、まあ普通の一人称ゲームと同じ感じになりますから、アバターが自分だと感じるというよりは、自分がコントローラでアバターを操作している(ラジコン)的な気分になります。

また、以前の記事でも書きましたが、VRでNPCを表示すると、こちらが何をしても期待するような反応を返してくれないので、NPCが人間では無くてハリボテである事が極めて強調されてシラケてしまいます。

ですが、VRSNSなら周りの人々は基本的に全員人間ですから、ちゃんと人間的な反応を返してくれます。例えばアニメの美少女みたいなアバターの人に話しかけると、普通にリアクションして応えてくれるでしょう。

何当たり前の事言ってんだと思うかもですが、アニメ美少女と”実際に”会話できる体験というのはこのような形でしか実現不可能です
VRは現実と比較すると触覚も無いし、嗅覚も無いし、現実より視覚(グラフィックス)も劣化します。VRは現実と比較して何一ついい所がありません。(まあ現実だとわざわざ出かけて同じ場所に集まる必要がありますが、VRではその必要が無い!みたいな要素をメタは推してるみたいですが、そんなもん、だったらVRじゃなくてもZoomで会話なり会議なりすりゃいいじゃんって話です)
しかし、現実世界ではアニメ美少女と会話する事は不可能ですから、その点においてVRは現実を超えられます
この際、その美少女の中身がおじさんだとか、そういう事は大して問題になりません。

いやまあ強いて言えばVRでなくても、YoutubeでvTuberのライブ配信に行ってコメント打って反応してくれることを期待するという方法でもアニメ美少女との会話は可能ですが、VRのような直接的なやり取りはできません。

アニメ美少女とお喋りしたいおじさんが二人いた時に、どっちが美少女役をやるんだ?みたいな話になるかもしれませんが、それならお互いがアニメ美少女アバターを着てVRChatで会話すれば、そこには完全にWin-Win関係が生まれます。

そういう訳ですから、自分のメタバースにVR対応が必要だとしたら、このような自分の理想のアバターへのなりきり、あるいはお互いにお互いが相手の理想のアバターになってあげる、みたいな要素を含む場合と言えるでしょう。

MetaのHorizonは、言っちゃあなんですがぶっちゃけアバターに魅力が感じられません。なんか下半身が無いし。

VRChatやclusterではユーザーが自由な3Dモデルをアップロードして自分のアバターに使えるのに対して、Horizonではそういう事が出来ません。

上でも書きましたが、VRでは良くも悪くも自分がアバターと一体化してしまいます
ですから自分の理想のアバターが使える事は相当重要な条件になります。
VRで魅力のないアバターを使わせるのは、ユーザーをダメでつまらなくてダサい姿に変身させるのを強要する残酷な行為です。最低の自分に変身したい人なんて存在するのか?
こういう場合、むしろVRである事はかなりデメリットになります。

もちろん、自分以外のユーザーも残念なアバターなわけで、そんな人達とわざわざ会話したいと思うでしょうか?だったら現実世界で実際に会って話した方がよっぽどプレゼンスが高いです。

ちなみにVRのマーケット規模の話をすると、たとえばメタのQuest2は出荷台数が1000万台を超えたらしいです。

まあスマホに比べると市場規模は物足りないかもしれませんが、AR/VRヘッドセットは2020年から2021年にかけて出荷台数が1年で3.5倍も増えたそうですから、成長率が著しいです。

ですから今の内にVRをやっておけば、今後この成長に乗っかれるという戦略もまああるっちゃあるでしょう。

クライアントサーバモデル VS P2Pメッシュモデル

UE4やUnityでは同時に参加可能な人数は60人~100人という話をしてきましたが、これはUE4では組み込みのネットワーク機能を使った場合で、UnityではNetcode for Gameobject(NfG)やMirrorを使った場合の話です。

これらに共通するのは、クライアントサーバ型のネットワークを使っている事です。
つまり、サーバあるいはホストが責任持ってゲームの全ての処理を行い、他のクライアントはサーバと通信して同期してもらう仕組みになってます。

クライアントサーバ型ではゲームの全ての処理を負担するのはサーバなので、サーバに思いっきり負荷がかかります。ですから60~100人で負荷が頭打ちになります。

それに対して、P2Pメッシュ型のネットワークというものもあります。

P2Pメッシュ型ネットワークでは、全てのクライアントがそれぞれ他の全てのクライアントと接続してクライアント同士でやり取りしたりします。
サーバに負荷が集中しなくて済むので、クライアントサーバ型より収容人数を増やす事が可能です。

例えば、RustというUnity製のゲームはRaknetというP2Pメッシュ型のネットワークライブラリを使用しています。

https://garry.blog/rusts-networking

おそらくこのおかげでサーバが集中管理しなくて済むため、Rustではなんと300人でのマルチプレイが実現できています。

ところでそもそもUnityの初期のネットワーク機能だったNetworkViewは、実際は中身はRaknetのラッパーでした。

つまり、昔はUnityもP2Pメッシュ型を採用していたわけです。
しかし、UnityはUNET以降はP2Pメッシュ型を捨ててクライアントサーバ型に移行しました。
どうして負荷が分散できて便利なP2Pメッシュ型を捨てて、参加人数が頭打ちになりやすいクライアントサーバ型に移行したんでしょうか?
それについてはもちろん理由があって、それについては後の記事で書こうと思います。

MMOスケールの同時参加人数

さて、UE4やUnityでは普通にやると100人くらい、P2Pメッシュ型なら300人くらいまでならまあ同時参加できそうな事が分かりました。

ですが、そんなんじゃ足りないよ!
1000人くらい同時参加させたいよ!!
と思った場合、それは実現不可能なのでしょうか?

例えばMMO(Massively multiplayer online game:大規模マルチプレイヤーオンラインゲーム)では、大勢のプレイヤーが同じ世界に存在できています。
ウィキペによるとMMOでは大体数百人から数千人が同時参加できるようです。

UE4やUnityのネットワーク機能はMO(数人~数十人規模のマルチプレイ)を対象にしており、MMO規模のネットワークはサポートされてません。

じゃあゲームエンジンでMMO規模のマルチプレイは不可能なのか?と言うと、それを可能にするソリューションもあったりします。

例えば、monoAIテクノロジーが提供する、XR CLOUDです。

XR CLOUDには超大規模同時接続エンジンが搭載されており、大規模なイベント開催が可能だそうです。

このXR CLOUDを利用して開催されたNEOKETというバーチャル同人誌即売会イベントがありましたが、その時は同じ世界に1000人が参加できるとの事でした。

https://techable.jp/archives/147104

このXR CLOUDは完全なソリューションとして提供されており、ユーザはゲームエンジンを自分で触らなくてもmonoAIさんが諸々全部やってくれる形みたいです。
XR CLOUDは”そういうプラットフォーム”であって、XR CLOUDのプラットフォーム上でバーチャルイベントが開催可能というだけであって、自分のメタバースにXR CLOUDが組み込めるという訳ではない点に留意してください。
ちなみに料金的には100人参加のイベント開催で55万円~だそうです。参加者から一人当たり5500円以上徴収しないと元が取れないでしょう。

ちなみに、どのようにして1000人参加が実現できるのか?について、どうやら各クライアントに対してそのクライアントの周辺に存在する人達の情報だけを送っているらしいです。
つまり、1000人が同時に表示されるわけでは無くて、自分の近くの人達だけが表示されます。
まあ、どっちみち1000人全員表示しようとしても描画負荷の問題で無理な気がします。

ですから、NEOKETのような展示会的な使い方はできますが、音楽ライブで観客席1000人を満員に!みたいな使い方は難しいんでは無いでしょうか。

こちらの事例を見ると50人くらいは同時表示できてそうです。↓

さて、じゃあ自分のメタバースに組み込める形でMMO規模ネットワークマルチを実現できる方法は無いの?という話ですが、たとえばDiarkisというミドルウェアと言うかサービスがあります。

https://diarkis.io/ja

DiarkisでもFieldモジュールを使えばMMOスケールのマルチプレイが可能になるようです。

Diarkisにはクラウドプランとエンタープライズプランの2種類があります。
これらは要するにPhotonで言う所のPhotonCloudとPhotonServerの関係に似てます。

クラウドプランではDiarkis側でクラウドサーバを用意してくれてるので、そこに接続する形になります。詳しい料金体系は要問合せですが、通信量とかに応じて従量課金な気がします。
エンタープライズプランでは自前でオンプレミスサーバを建てて、そこにDiarkisのサーバソフトウェアをインストールする形になります。
クラウドプランではサーバ側のカスタムロジックが書けません。エンタープライズプランなら書けます。

DiarkisはUE4やUnity向けのSDKが用意されてるらしく、自分のメタバースにMMO規模のマルチプレイを組み込めます。

Diarkisが採用されている事例としては、たとえばプロジェクトセカイのライブ機能にDiarkisが使われています。

https://gamebiz.jp/news/294249

「Diarkisのおかげで同接10万人を実現した」そうですが、10万人と言ってもライブ会場に10万人が同時参加してるわけではありません。
プロジェクトセカイではライブの同時参加人数は100人までです。つまり同接10万人というのは実際には100人の部屋が1000個に分かれるような形になります。

ゲームエンジンでMMOを実現するアセット

Unityにはたとえば「uMMORPG」というMMOが作れそうなアセットがあります。

https://assetstore.unity.com/packages/templates/systems/ummorpg-51212?locale=ja-JP

このアセットでは同接500人が可能だと主張しています。
しかし、MMOと言いつつ、結局のところ1台の専用サーバ上で動作するもので、サーバのスケーリングに対応してない点に留意してください。

UE4には「MMO Starter Kit for Unreal」というアセットがあります。

https://codespartan.sellfy.store/p/fo6a/

こちらはバックエンドにmySQLデータベースを使用しており、ユーザーデータをデータベースに保存するだけちょっと本格的です。
しかし、やっぱりuMMORPGと同じで1台の専用サーバ上で動作しているに過ぎないようです。

ただし、こちらの「MMO API DSSLite」を組み合わせると、サーバのスケーリングが可能になるようです。↓

https://www.unrealengine.com/marketplace/ja/product/dsslite?sessionInvalidated=true

どういう仕組みか?というと、まず世界を細かいマップに分けて、ポータルを通ってワープできるようにします。
それで細かいマップごとにDSSLiteがそのマップのサーバインスタンスを起動してくれます。
細かいマップごとにサーバを分ける事で、同時参加マルチプレイ人数を疑似的に増やす事が可能になります。
DSSLiteはオートスケールしてくれますから、例えばあるマップの人数が満員だったらそのマップの新しいインスタンスを立ててくれたりしますし、逆に誰もいなくなったマップのインスタンスは閉じてくれたりします。

UE4では他にも「Open World Server」というアセットもあります。これはオープンソースで提供されてます。

https://github.com/Dartanlla/OWS

仕組みとしては先ほどのDSSLiteと同じような感じです。

さて、これらのアセットは、世界を細かく分割して、疑似的に同時参加人数を増やそう!みたいな発想であって、結局のところ同じマップで同時に参加してる人数を増やせるものではないようですね。

こういうユーザーが提供しているアセット類は、価格が安かったり無料だったりする分、厚いサポートが余り期待できないという問題があります。

最終的にはトラブルやら何やらは全て自分で解決するハメになるでしょう。
趣味でMMOの仕組みを勉強してみたい!という分には構わないでしょうが、ビジネスでガチンコでメタバース作るぞ!という時にこういうモノを採用するのはリスクがありますから、相当な覚悟が必要でしょう。

どちらかと言うとDiarkisやXR Cloudの方がコストはかかるかもしれませんがその分困った時は手厚いサポートが期待できます。

私は個人的にはゲームエンジン側でノーサポートなMMOゲームに素人が手を出すのはオススメしません。逆に言うとMMOは今のところゲームエンジン側でサポートできないほど厄介なシロモノだという事だからです。

ここまでのまとめ

このセクションではマルチプレイ同時参加人数について検討してみました。

100人くらいまでならゲームエンジンに用意されているネットワーク機能で何とかなります。(Photon Fusionは200人)

それ以上となると、P2Pメッシュ型ネットワークを使えば300人くらいまで可能らしいです。

さらにそれ以上の1000人とかで同時参加したければ、DiarkisのようなMMOスケールでの大規模同時マルチプレイエンジンが必要になるでしょう。

しかし、正直言って私が思うのは、「そんな大人数で同時参加できて本当に嬉しいんだっけ?」という事です。
せいぜい50人とか100人でもう十分ではないでしょうか?

というのも、ハッキリ言って私は現実世界で人が沢山いる事で嬉しいと思った事ってほとんど無いです。
ジムに行くときも、銭湯に行くときも、美術館に行く時も、人が空いてれば空いてるほど「ラッキー」と思いますし、混んでると「ついてない」と思います。
サウナに入場待ち行列が出来てた日なんかには、「最悪だ」と思いますね。
満員電車に乗って嬉しい人とかいますかね?

NEOKETが同時参加1000人を謳っていたのは、コミケみたいに沢山の人が集まれますよ!という話だと思いますが、そもそもコミケの人だかりって嬉しいもんなんですか?人が混んでると移動が大変だし、サークルを見て回るのも大変だし、目当ての同人誌が売切れたりしそうでデメリットしかなくないですか。単に見て回る分には会場がガラガラの方が嬉しいでしょう。
つまり、コミケに行かないと手に入らない同人誌とかの魅力的なコンテンツが集中している結果として、コミケには人が殺到しているわけで、その逆ではないでしょう。人が殺到しているからこそ嬉しいなんて事はないでしょう。

「でも音楽ライブとかは大人数の観客の一体感が大事でしょ?」みたいな意見があるかもしれませんが、本当にそうなんでしょうか?

例えば東京ドームでライブとかありますよね。

ドームでライブなんて、観客はアーティストの姿なんてこんなもんほぼ見えないでしょ。
5万人で参加する東京ドームライブより、100人くらいしか収容できないライブハウスでアーティストが目の前で歌ってくれる方が普通に考えて嬉しいような気がします。

ドームのライブなんてなるべく観客を詰め込みたい興行側の都合でやってるだけ…かもしれませんね。

ですから「千人とか1万人で同時参加できる音楽ライブができるメタバースを作ろうぜ!」とか言う話が上がってきたら、ちょっと冷静になって考え直してみるのもいいかもしれません。
興行側の都合で観客のプレゼンスを下げて(アーティストが遠すぎて見えない)まで大規模会場に押し込まれてしまう問題をどうしてバーチャルでわざわざ再現する必要があるんですか?という事ですね。
バーチャルなら1万人全員がそれぞれアーティストの目の前の特等席に座る事だって可能なはずなのに。

また、「フォトナが100人なら俺たちは1000人で同時参加できるバトロワ作ろうぜ!」みたいなアイデアも、だがちょっと待って欲しい。
1000人でバトロワして楽しいのか?という話があります。
というか、ただでさえ100人でもすでに多すぎるという話もあります。

だって、100人いたら最後まで勝ち残れる確率は、数字だけで言えば1%しかありません。
99%負けるゲームってどうですか?
「いや、そこはプレイヤーの腕次第じゃん!」と思うかもしれませんが、でも結局自分と同じくらいの腕前の人とマッチングするわけですから、やっぱり勝率は1%くらいでしょう。

さらにこれが1000人になれば、勝率0.1%になってしまい、勝利は絶望的になります。

「じゃあバトロワじゃなくて、二つの陣営に分かれて戦う形ならどうや!」という案も当然出てくるでしょうが、同時参加人数が増えるほど、プレイヤー1人当たりがゲーム全体の戦局を左右できる度合いは微少化されているので、あまりに人数が多いと「このゲーム、勝とうが負けようが、結局自分がいてもいなくても関係ねーじゃん」ってなってしまいがちです。

ちなみにApex legendsでは3人でチームを組んで戦います。最大20チームが同時参加します。
ですから、確率だけで言えば5%の確率で勝利できるので、これくらいが正解のバランスかもしれません。

そんなわけで、ゲームとかメタバースを作るにしても同時参加人数には上限がありますが、結局のところ参加人数が多ければ多いほど面白いモノなんてほとんど無さそうだぞ…という話があります。

とは言え、例えばclusterの加藤さんは、「セカンドライフが失敗したのは世界が広すぎて過疎ってるように見えるからで、その点clusterはイベントが開催されるごとにガッと集まってくる仕組みだから密にコミュニケーションできる」というような事を語られています。

https://jp.techcrunch.com/2017/04/04/cluster-will-launch-in-may/

なるほど。私は現実世界では人がいないほど良いと思うものの、セカンドライフでは人がいないとダメという事でしょうか。
まあ、セカンドライフにはコンテンツが”コミュニケーション”だけしかないのかもしれないですね。その場合、他人がいないとセカンドライフはノーコンテンツの虚無という事になります。

同人誌即売会や音楽ライブには、同人誌とかライブという核のコンテンツがあります。
ゲームはもちろんそのゲーム自体が核のコンテンツです。
ちなみにVRChatには一見核となるコンテンツはなんら存在しないように見えますが、上述したように、お互いがお互いの理想のキャラを演じ合って会話する事で、自らが最高のコンテンツと化してお互いに提供し合う形になってます。

そうして考えてみると、メタバースと言っても何となくイメージするような人々がコミュニケーションできる箱だけをポンと置いてもセカンドライフのように過疎ってしまう運命なのかもしれません。
箱だけあってもしょうがなくて、それよりも核となるコンテンツ、例えば音楽ライブ、同人誌即売会、アバター展示会などがあって、そこに人が集まって来て初めてコミュニケーションが発生する形に見えます。

それで言うと、一番強力なコンテンツってなんだったっけ?というと、それはやはりゲームでしょう。(最近clusterもゲームが作れるようになった)
そうして考えると、メタバースとして一番伸びそうなのはメタのHorizonみたいなコミュニケーションの箱みたいなものよりも、フォトナとかRobloxのようなゲームベースのものの方が有利に思えます。

というのも、少なくとも非ゲームよりもゲームの方がプレイヤー同士のコミュニケーションは容易です。例えばもしマイクラでバッタリ知らない他人と遭遇したとしたら、「今、羊毛が欲しいんだけど、肉と交換してくれない?」みたいな感じで自然に交易的なコミュニケーションが発生するでしょう。

人間のコミュニケーション自体、突き詰めると全てが交易的なんじゃないでしょうか。

しかし、バーチャル即売会では、正直言って大して他人と話す事はありません。特に交易するものが無いからです。
何のイベントでもない、セカンドライフの街角とかだと、なおさらでしょう。

つまり、メタバースを作るなら、単にアバターが表示出来て他人とコミュニケーションできれば一丁上がりでしょ?ではなく、どうやってコミュニケーションを促すか仕組みを考えないといけないでしょう。

現実世界で人がうじゃうじゃいても、大抵は邪魔なだけで何のメリットも無いので嬉しくありません。メタバースで人をうじゃうじゃ出すなら「何で他人がうじゃうじゃいると嬉しいんだろう?」という点を先に考えましょう。

まあたとえば自分が露天商だったらお祭りに人がうじゃうじゃ来てくれてる方がそりゃその方が儲かるから嬉しいでしょうけどね…。だからメタバースに経済(コマース)の仕組みが必要だ!って話になってるのかも。

つまり、究極的には人間のコミュニケーションは交易だ!とすると、メタバースをゲーム化してプレイヤーにゲームクリアなどの目標を与えれば、プレイヤー同士はアイテムの交換とかで自然に交易コミュニケーションが発生します。
あるいは、メタバースに経済を持ち込んで、プレイヤー同士が仮想通貨で買い物し合うような仕組みを入れれば、やっぱりそれは交易コミュニケーションをもたらしてメタバースを盛り上げてくれそうです。

いや、だったらどうせならメタバースがゲームでありつつ経済もあるのが一番いいのでは。私が今適当に考えた限りではこういうメタバースが一番ベストに思えますね。

経済があると、それぞれのプレイヤーは自分が露天商みたいなもんですから、人がうじゃうじゃいてくれた方が金づるが一杯いるんだから嬉しいです。
そして、交易がある事でプレイヤー同士のコミュニケーションは活性化するので、人がうじゃうじゃ集まってくるでしょう。

今考えた限りでは、このようなメタバースであれば、同時参加人数は多ければ多いほど嬉しい!って言えそうです。