以前、「知り合いでUnityやUnreal Engineでゲームを完成できたヤツ見た事ない。RPGツクールなら作れたヤツいたけど」みたいなツイートを見かけました。

まあたしかにそういう話は分からんでもないなと思います。

UnityやUnreal Engineは、ゲームエンジンとか言ってるくせに、どんなゲームでもすぐさま中身の制作に着手できるわけではありません。得意なジャンルと苦手なジャンルがあるという事です。

得意なのはFPSとかTPSです。

Unityは最近では2D機能とかも充実してきてますが、昔のUnityはモロにシューターゲームを対象にしていたようで、サンプルも普通に銃を撃ち合うFPSとかでした。
Unreal Engineも、そもそもEpicが自前のゲームを作るためのゲームエンジンみたいな所があって、Epicが作るのはもっぱらシューターゲームですから、やっぱりそういうゲーム向けに機能が偏ってる気がします。

ですから、UnityやUEでRPGを作ろうと思っても、すぐさまゲームの中身を作り始める事はできません
ゲームの中身を記述するためのエディタ作りみたいな所から始めるハメになります。

どういうこっちゃ?というと、例えば小説を書こうと思った場合、パソコンのテキストエディタ(たとえばメモ帳)を開けばすぐさま小説の中身を書き始める事ができます。当たり前ですが。

ところが、ゲームエンジンでRPGを作ろうと思っても、すぐさまゲームの中身を作り始める事はできません。なぜなら、小説を書く時のテキストエディタに相当するものがゲームエンジンには用意されてないからです!

ですから、RPGゲームを記述する用のエディタ…RPGエディタとでも言うべきものから作り始めるハメになります。
これは、小説を書きたいだけなのに、パソコンにメモ帳が用意されてなくて、テキストエディタの開発から始めるハメになるみたいなアホらしさがあると言えばあります。

問題が深刻なのは、RPGを作った事が無くて、初めてUnityを触る人は、Unityに”何が用意されてないか”が分からないという点です。
Unityのドキュメントや技術ブログには、Unityに用意されている機能については書かれていますが、何が無いのかは書かれてません
ですから、Unityユーザーは、「どんだけUnityを勉強しても、何故かRPGが作れるようにならない…」という困難に陥りがちです。

というわけで、ゲームエンジンでゲームを作ろうとしても、大抵のジャンルではすぐさまゲームを作り始める事ができずに、ゲームのエディタ作りからやるハメになるという事です。そして、エディタを作らなきゃいけないという事に気付かずに、何故だか分からんがゲームが作れない…ってなってる人も多そうという話でした。

まず”ゲームのエディタ”ができなければ、ゲームの中身の作成に着手できませんから、ゲームを完成させる事は困難です。

さて、ゲームエンジンがそのような問題を抱えてるのに対して、RPGツクールは、最初からRPGの中身を作るためのエディタが完全に用意されています
ですから、すぐさまゲームの中身を作り始める事ができます。

このような理由によって、ゲームエンジンによるゲームの完成率がメッチャ低くて、RPGツクールの方が完成率が高いという事はありそうだと思います。

RPGツクールのイベントエディタはこんな感じです↓

https://tkool.jp/mv/guide/006_008c.html#01

このようにイベントを記述できるエディタがRPG制作には必要になります。

しかし、RPGツクールはゲームが作りやすいメリットがある一方で、機能が決め打ちで作られており、カスタマイズの自由度の余地が少なそうという問題があります。

また、RPGツクールの経験がある人なら、Unityを始めても、UnityにRPGエディタが無い事にすぐさま気付けるでしょうから、何故作れないのか分からない…と悩まなくて済むでしょう。

まあそんなわけで、Unityは制作できるゲームの自由度が高いけど、RPGエディタが無い。それに対して、RPGツクールはエディタがあるけど作れるゲームの自由度が低い…という一長一短がある事が分かりました。

実は、このジレンマを解決できる手段があるようです。あるというか、もうすぐ登場します。

それは、RPG Maker Uniteです。

https://rpgmakerunite.com/

これは新しいRPGツクールで、その最大の特徴は、Unity上で動作する事です。
つまり、UnityですぐさまRPGの中身を作れるエディタが使えるという事です。
そして、Unityですからゲームの内容も自由自在にカスタマイズできる事が期待できます。
UnityとRPGツクールのお互いの長所のいいとこ取りです。

さらに、RPG Makerの中身はC#で書かれており、それ自体をユーザーが自由に編集できるそうです!

https://store.steampowered.com/news/app/1650950/view/4996189706098265131

まだ詳細な情報は公開されてないので詳しい事は分かりませんが、現状出ている情報だけ見た限りではそういう感じみたいです。
素晴らしそうですね。
RPG Maker Uniteがリリースされれば、とりあえずRPGについては、Unityだとすぐさまゲームの中身を作り始められない!という問題が解決して、挫折する人が減りそうです。

作りたいゲームがRPGじゃなくてアドベンチャーゲームだという人には、Adventure Creatorというアセットをオススメします。

https://assetstore.unity.com/packages/tools/game-toolkits/adventure-creator-11896?locale=ja-JP

このアセットも、高度なイベントエディタが用意されていて、すぐさまアドベンチャーゲームの中身を作り始めることが可能です。
ショーケースを見ると、このアセットを使って実際にゲームをリリースした人が沢山いる事が分かります。

ビジュアルノベルが作りたい方には、”“というアセットがオススメです。

https://assetstore.unity.com/packages/tools/game-toolkits/utage3-for-unity-text-adventure-game-engine-version3-80727

宴ではエクセルを使って中身を記述していくようです。

何にせよ、ゲームを作ってる時は、「今自分はゲームの中身を作ってるのか、それともゲームのエディタを作ってるのか?」という違いは意識すべきでしょう。
いくらゲームエンジンを触っていても、ゲームの中身の記述ができてなければ、ゲームは一向に完成しません。
ゲームシステムが複雑なほど、エディタ部分の作成に時間がかかって中身に移行できなくなりがちです。
完成を目指すなら、できればなるはやで中身の記述に移行したいものです。

さて、私自身の制作の話に移ります。
最近、キヨ氏のホラーゲーム実況動画とか色々観ていた影響で、私もRPGツクール的なホラーゲームみたいなの作ってみたいなあと思いました。

しかし、RPGツクールは使いません。2Dドットのゲームはドット絵を打つのが面倒だから3Dの方がいいなと思ったからです。

使うのはもちろんUE5でしょう!と思い、マーケットプレイスで入手したJRPGのテンプレートとか触ってみましたが、どうも会話ダイアログが貧弱だったりして、これを使うならアセットの改造が必要だな…と思いました。
アセットを改造するには中身を理解してなければ無理です。私は今まで「わざわざUEの機能マジメに勉強しなくても、テンプレートアセット使えばゲーム作れるんじゃね?」と思ってましたが、結局は色々カスタマイズの必要が出てくるので、という事はゲームテンプレートアセット使うにはそもそも自力でそれを作れるくらいスキルが無いと無理だな…と分かりました。

UnityにはRPG Maker UniteやAdventure Creatorや宴がありますが、それに比べるとUEのマケプレはそこまで充実してない印象です。イチから自作するしか無いか…。

そういえば、スマイルゲームビルダーというRPG作成ソフトがある事を思い出しました。

http://smilegamebuilder.com/jp/

スマイルゲームビルダーは、RPGツクールと大体同じ感じでRPGが作れますが、違うのはグラフィックスが3Dです。
「そうそう!丁度こういうのを求めてたんだよ!」と思いましたが、かなり誘惑されたものの、やっぱりスマイルゲームビルダーも自由度が低そうだったので、何だかんだ結局UE5で自力で作ろうかな…と思いました。

さて、上で書いた通り、RPGを作るにはエディタが必要です。そして、UEにはRPGエディタがありません。

そこで私が目を付けたのは、”Not Yet Dialogue Plugin System“というプラグインです。
これはマーケットプレイスで50ドルで売られてますが、GitHubからダウンロードすれば無料で使用できます。

https://gitlab.com/NotYetGames/DlgSystem

このプラグインが何なのか?と言うと、RPGとかの会話ダイアログを作成できるモノです。

独自のノードベースエディタによって、直感的に分岐とかを作れます。

このプラグインは、一見するとショボく見えますが、凄まじいポテンシャルを秘めてます。

単に会話が記述できるだけでなく、他のブループリントの変数を弄ったり、イベントを発生させたりできます。
要するに、拡張すれば何でもできるという事です。
RPGツクールのイベントエディタに相当するレベルの可能性を秘めてます。

しかし、このプラグインの実力は、サンプルプロジェクトを見ても、ドキュメントを見ても、公式チュートリアルを見ても、イマイチ伝わってきません。

オススメなのはこちらの、ダイアログプラグインを使ってビジュアルノベルを作成するチュートリアルシリーズです。

これを見ると、ダイアログプラグインでこんな事までできるのか!と驚きます。

しかし、こちらのチュートリアルはかなりすさまじい量のボリュームがあります。47本も動画があります!まあビジュアルノベルをガッツリ作るんだから仕方ありませんが。
ですからオススメしても実際誰もやらないかもな…。私は1日1本消化のノルマを立ててこなしてますが、まだ途中です。
シリーズで一番再生回数低い動画は140回くらいしか再生されてないので、多分このチュートリアルシリーズをこなしてる人は世界に30人程度しかいなさそうです。

ブループリントの動画チュートリアルって、30分の動画でも追うのに3時間とかかかったりして、相当大変です。さらにシリーズが長くなるとブループリントが複雑化していってしっちゃかめっちゃかになっちゃうし、1か所でも間違えると何故だか知らんが動かなくなって、どこを間違えたのか追跡不可能になりがちです。
要するに、完全に苦行なんですよね。
それでも、やるだけの価値はあると個人的には思いました。

このチュートリアルでは、ダイアログプラグインの使い方以外にも、
・UMGによるUIの作成方法
・タイプライター効果(会話ダイアログで1文字ずつ表示されるヤツ)
・ゲームオプションの作り方
・セーブ、ロード
・リッチテキストの使い方
・オセロの作り方
という感じで、相当多くの事が学べます。

「猫でも分かるUE4」を履修したくらいのレベルの人(つまり私)がその次に観るのにちょうどいいと思います。

私はとにかくこのチュートリアルをこなしたら、次は早速ダイアログプラグインを使ってRPGエディタを制作しようかなと思ってます。