こんにちは。海行です。

流行りに乗ってマストドンのアカウント作りました。

https://mstdn.soysoftware.net/@umiyuki

いわゆるお一人様インスタンスです。
よろしくお願いします。

ソーシャルな魂と不可分な肉体

人は死んだら魂は残るのでしょうか?
魂が残るかはともかく、twitterのログは残ります。

他の人がどうかはわかりませんが、私にとってtwitter上のソーシャルな自分とリアルの肉体を持った自分は不可分です。
どっちかというとリアルの自分よりtwitterの自分の方が比率が上のような気がします。

「海行さんってtwitter無くなったら詰みますね」
と言われたりしますが、たしかにそうだと思います。

私が死んでもtwitterのログは残ります。
でも、twitterがクローズしたら?あるいは垢が凍結されたら?

それはもう、おしまいですね。ガフの部屋の崩壊です。

ようするに、私たちの肉体と不可分なソーシャルな魂は、twitterという一企業の引力に縛られている。
その事実には当然危機感は抱いていました。

データ消失のリスクをヘッジするなら、バックアップを取ろうというのが普通の感覚だと思います。
ですので、できればtwitterクローンのようなサービスが出てきてくれればtwitterログを二重持ちしてバックアップにしたいというような事を考えていました。

実際、自分のサーバにtwitterクローンのようなものを建ててみたりもしましたが、これにも問題がありました。
そこにtwitterのツイートのログは残せたとしても、そこに他の人達との繋がり(ソーシャルグラフ)がバックアップできるわけでは無い事。
自分一人しかユーザーがいないtwitterのようなものが残った所で、誰にも顧みられない。
無人の島で「俺は自由になったぞ!」なんて言ってみた所で、そりゃ自由というより遭難ですよ。
ソーシャルな魂とは、単なるログだけじゃなくて、ソーシャルグラフと結び付いたものだと言えそうです。

そんな問題を抱えていた中、突如現れたのがマストドンです。

自分のサーバに建てるtwitterクローンのようなものという所は今までと同じですが、マストドンはサーバ越しにフォローする事が出来ます。
自分しかいない無人島だったのが、一気に世界中と地続きになってみんなと交流しまくれるようになりました。

マストドンによりtwitterの引力からソーシャルな魂を開放できる可能性が出てきたわけですが、マストドンの利用方法には2種類のパターンがあると思います。
他人の建てたインスタンスでアカウントを作るか、自分のドメインとサーバで自分のインスタンスを建てるかです。

他人の建てたインスタンスでアカウントを作るパターンは簡単ですが、結局のところ、そのインスタンスの管理者に魂を引かれてしまい、クローズや凍結に怯えるハメになるという意味ではtwitterの時と同じ事の繰り返しになってしまうと言えます。
もちろん僕がソーシャルな魂(ログとソーシャルグラフ)に執着しすぎてるだけで、クローズしたらその時はその時で気にしない人も多いと思いますが。

本当の意味で魂を自由にするには、やはり自分のドメインで自分のインスタンスを建てる事になると思います。
そうすれば、もはや他人の事情や思惑で自分のソーシャルな魂をどうこうされずに済むからです。

しかし、twitterからMastodonへ移り変わるなら、マストドンからまた何か新しいサービスへの移行が起きるのではないか?
であればソーシャルな魂の保持なんてたわごとに過ぎない!と思うかもしれません。

ポイントは、マストドンがOStatus規格に準拠している事です。
例えば同じOStatus規格のGNUSocialというサービスがありますが、実はマストドンから別サービスであるGNUSocialのアカウントをフォローしたり、フォローされたりしてお互いに投稿を読む事が出来ます。
どちらのサービスもOStatus規格に準じているので、こういった連携が可能になります。
仮に自分のドメインでGNUSocialからマストドンへ移行する場合も、”ユーザー名@ドメイン”さえ同じなら、フォロー、被フォロー関係も引き継げると思われます。

同様に、今後マストドンの次の有力サービスがでてきて乗り換える事になったとしても、それがOStatus規格であれば、トゥートログもソーシャルグラフも維持できます。
であれば、(OStatusのようなマイクロブログの形式自体が廃れない限り)もう死ぬまでログもソーシャルグラフも失う事は無い、これがマストドンに見出したソーシャルな魂の開放の可能性です。

それぞれの思惑

ところで、マストドンの開発者のGargron氏は、マストドンを分散SNSとして開発しながらも、自らユーザー数3万人超の巨大インスタンス(mastodon.social)を運営しています。
なぜ分散のメリットを掲げながらも集中したインスタンスを建てたのか?

実はtwitterからの魂の開放のためには、3つの要素が必要になります。

1つめは、素晴らしいSNSプログラム。
これはマストドンの事ですが、いくら素晴らしいプログラムでも、それだけあっても何も起こりません。
2つめに、沢山の利用者。
やはり繋がれる相手がいない事にはSNSになりません。ではどうやって沢山の利用者を集めるか?
3つめが巨大インスタンスです。
理想的には一人一つのインスタンスを持つべきだと言っても、誰もが自分のサーバを建てるのはハードルが高すぎます。
気軽にサインアップできるいくつかの巨大インスタンスが建って、まず沢山の利用者を確保する事で、その事が個人でもインスタンスを建てるインセンティブになります。
故に、マストドン普及の最初の流れを作るためにGargron氏は巨大インスタンスを運営しているのだと思います。
サーバコストもかなりかかっていると思われますが、最終的にsocial鯖をどうするのかはGargron氏のみぞ知るです。

日本では急にマストドンが流行りましたが、やはり自分のソーシャルな魂がtwitterに握られている事に違和感があった人が多かったのではないでしょうか。
何しろtwitter社は赤字続きで、買収してもらう事にも失敗するなど、先行きが見えない状況です。
他にも、エッチな絵を描く絵描きさんのアカウントが凍結され、申し立てもできない理不尽なケースも沢山発生し始めています。
これらの状況から、新天地を求めつつも行き場の無かった人が、マストドンに押し寄せたみたいです。

そのような流れで日本でも、誰でもサインアップできる巨大インスタンスがいくつか立ち上がりました。

mstdn.jpは、運営は個人の学生によって行われていますが、サーバはさくらインターネットさんが提供しています。
pawoo.netはpixivさんが運営しています。
friends.nicoはドワンゴさんが運営しています。

これらのサーバにクローズのリスクはあるのでしょうか?
ここからは完全に憶測で書きますが、企業と言うものは最終的に利益を出すに至る出口を見据えて行動するものであり、マストドンを建てたのも単なる善意ではなく何か思惑があっての事のハズです。
というか、マストドンのサーバコストはかなり高いですし保守、運営も大変そうですから、単なる善意だったら絶対長続きしないので、裏があればあるほどユーザーとしては安心です。

あくまで憶測だとダメ押ししておきますが、
mstdn.jpについては、さくらインターネットさんは早速スタートアップスクリプトを提供して、自社サービスの「さくらのクラウド」で簡単にインスタンスを建てられるようにしました。
何故かVPSじゃなくてクラウドのみ対応みたいですが、マストドンは案外サーバ負荷が大きいので、後から自由にスケールアップできるクラウドを推しているのだと思います。
要するに、mstdn.jpの裏にあるさくらインターネットさんの目的は、さくらのクラウドへの送客…かもしれません。
マストドンが流行る事で自社サービスも流行る…利益への繋げ方が分かりやすいです。

pawoo.netはマストドンの開発に積極的に参加しています。
早速勉強会を開催されたり、pawooの開発者の求人も出しているみたいです。
つまり、pixivさんはpawooによってオープンソース開発に携われる企業というイメージを打ち出して、優秀なエンジニアを集めようとしている。
そういう推測をしている方もいました。
自分達で手塩にかけてマストドンを育ててるわけですし、そういう目的が達成されてるあいだはクローズの心配はないかもですね。

friends.nicoは裏に何があるのかよく分かりません。
何も考えずノリで建てたのかも…?
でもタイムラインの様子だと、ドワンゴの社員さんが一杯いて社内Slackに取って代わりそうな雰囲気らしいです。
そうやって社内インフラとして使われるなら案外クローズから遠いのかもしれません。

自由は高くつく

twitterから魂が解放される代償は大きいです。

私が個人インスタンスを建てようとした時は、ServersmanVPSで借りたサーバを使いましたが、CentOS6だと色々と古くてマストドンを建てるのに物凄く苦労しました。
建てた後もバージョンアップ更新に対応したり、ログを見るとよくわからないエラーが出てたり、何故か画像をアップできなくなったり、メンテも物凄く大変です。
データが吹っ飛んだ時のために何らかのバックアップもしないといけません。

あ~、twitterを使ってるだけならこんな事一切考えずに済んだのに…。
そこまでしてソーシャルな魂を守る必要があるのかどうかはその人次第だと思います。

自由の代償は高くつきます!

自由は安くなった

とは言え、マストドンのような素晴らしいサービスが開発されたおかげで、こういうプログラムをわざわざ自分で作らなくても、ただサーバに導入するだけで済むようになりました。
きっとバージョンアップもGargron氏や開発に参加してる皆様によって今後もバシバシ行われて行くでしょう。

そういう事を自分がやるとしたらどれほどコストがかかるかと考えると、以前より圧倒的に安く簡単に自由を得る事ができるようになったとも言えます。

今後はもっと誰でも簡単にサーバを借りてインスタンスを建てる事ができるようになるかもしれません。

自由は安くなりつつあります。

肉体とともに滅びる魂

書いてて思いましたが、自分が生きてる限りソーシャルな魂を守れるとは言え、自分が死んでサーバもドメインも維持されなくなったらソーシャルな魂もそれまでですね。

う~ん、永代供養みたいな感じでデジタルな墓石としての永代ドメインが欲しい。

マストドン利用上のリスク

twitterみたいに集権的でなく分散している事がマストドンのメリットですが、裏返すとデメリットもあります。

例えばトゥートが炎上して、削除しようとしたとしても、自分のインスタンス上で削除されるだけで、すでに世界中のインスタンスに拡散されたトゥートは消す手段がありません。

同様に、後から鍵垢にしても、過去のトゥートが隠されるわけでもないです。

また、誰かが個人インスタンスから世界中に誹謗中傷を流したとして、通報して消してもらうような方法がありません。
いきなり警察や弁護士に相談する事になってしまいそうです。
それが海外からだったりしたら、どう対応すればいいやら見当つきません。

他にも、オープンソースであるが故に、自由に改造できてしまいます。
例えばDMを送っても、送り先のインスタンスがDMもパブリックタイムラインに流しちゃうようにプログラムを改造している可能性もあります。

こういったリスクを承知して、基本的に他の人に見られたら困る書き込みはマストドン上で行わないようにしてください。
マストドンの公式ドキュメントにもそのような事が書かれてました。