はじめに
はじめにこの記事は2017/10/28時点での情報であり、以降は状況が変化している可能性があります。
この記事の内容によってこうむった不利益などについては、一切責任を持てません。ご了承ください。
本日、VRプロフェッショナルアカデミーさんにて、Unity開発者認定試験を受けてきました。
前回の試験が日本初の認定試験で、こちらが2度目だとすると、今回は日本で3度目の認定試験でしょうか。
回答終了時にその場で点数が発表されました。
1400点以上取ると合格です。私は1940点でした。
合格!
経緯
Twitterで認定試験を受けた方のツイートを見かけて、私も腕試しに受けてみたい!と思いました。
しかし、調べたら受験料が24,000円もするとの事!なにそれ高すぎ!
だってたとえば英検3級の受験料が3,800円です。
原付免許の受験料ももろもろコミコミで7,750円です。
24,000円あったらいくつか便利なアセットでも買った方がマシや!
受かったとしても有効期限はたったの2年らしいしな!
(ちなみにアメリカでの受験料は250ドルだそうなので、日本の方が割安です)
最初はそう思ってましたが、段々Unity認定試験のビジネスモデルの方が気になってきました。
考えてもみていただきたいのですが、Unityは自ら認定試験を開発し、教材を作り出し、何もない所からUnity認定利権を生み出そうとしてるのですよ。
これについては後述します。
Unity認定試験のビジネスモデルを暴き、こうやってブログのネタにもする。
そこまですれば24,000円の元は取れるかもしれないと思い直して受験を申し込みました。
Unity認定試験の概要
試験の目的
Unity公式サイトによれば
ゲーム開発の現場において必要とされるUnityに関する知識と技能が一定水準に達している事をUnity Technologiesが認定するのがUnity認定試験です。
もっとも基本となるUnity開発者認定試験はプログラマのみならず、ゲームデザイナ、アーティストなどゲーム開発現場でUnityを触るすべての職種に向けて作られており、もちろん日本語で提供されます。
だそうです。
つまり特にUnityエンジニア向けという事では全然無くって、むしろゲームデザイナやアーティストにも向いてるんだそうです。
要するに誰でも向けです。
受験者向けの教材としてコースウェアが用意されています。
コースウェアというのは動画集+確認問題で、動画を見ながらUnityの使い方をイチから学べるものになってます。
コースウェアはUnityProライセンスやPlusライセンスのサブスクリプションの人は無料(Plusは1ヵ月、Proは1年)で利用できます。
しかしProライセンスは年額180,000円、Plusライセンスも年額50,400円するのでコースウェアだけのために契約するのはつらいかもしれません。
そこで、受験申込時に18,000円でコースウェアだけを購入する事もできます。3ヵ月間利用できるそうです。
私はPlusライセンスなのでコースウェアを利用しました。
また、VRプロフェッショナルアカデミーでは試験の1週間前に行う2時間の対策講座もあります。
これは1,000円です。
私はこの講座も受けました。
受験者はほとんどの人が対策講座も受講しているようでした。
実際の試験内容
実際の試験がどのような物か、申し込み時点では完全に謎(マークシート式とかかな?とか思ってた)でしたが、こんな感じでした。
・試験は1問20点で100問あって、つまり最大2000点。70%正解(1400点以上)で合格。制限時間は90分。
・試験開始時(10時)に受験の部屋に入ってないと試験を受けられなくなる。
絶対に遅刻しないようにしましょう。マジで。
・受験の部屋には1人1台PCが並んでいて、ブラウザから回答する。
・問題形式は以下の3種類
→選択問題:4択から正しい選択肢を選んでマウスでチェックする。
→組み合わせ問題:4つの項目に対して4つの回答を正しく組み合わせる
→画面クリック問題:画面の正しい個所をクリックする
ほとんどが選択問題で、4問くらい組み合わせ問題、4問くらい画面クリック問題があった気がします。
・問題は受験者ごとにランダムに出題される(被らない問題もある)のでカンニングは不可能だそうです。
・メモなどの持ち込みは禁止。スマホは机の上に出さないように。
・飲料は蓋つきの物は持ち込みOK。私はキャップ付きの缶コーヒーを持ち込みました。
・設問は16のセクションについて上から順番に1つずつ問題が出て回答する。
セクションが終わるごとにこのセクション内での点数が表示されます。
具体的にどの問題を間違えたのか、正解は何だったのかはわかりません。
・全部の問題を回答し終わったらこの記事の頭の写真のような画面が出て、終わった人から退出OKです。
画面の撮影を勧められます。SNSに上げたりしていいのか確認したらOKだったのでtwitterに上げました。
試験時間は90分ありますが、かなりゆっくりやっても時間を使い切る事は無いと思います。
一度回答した問題は後戻りできないので、メッチャ落ち着いてまったり回答するのがいいと思います。
・帰り際に何故かR9プロジェクトとかいうブランド?の長袖シャツをもらえました。
試験対策
正直こんなもんノー勉(ノー勉強)で受かったるわいと最初は思ってましたが、対策講座で情報を聞いて考え直しました。
VRプロフェッショナルアカデミーでの認定試験は開催2度目なので、1度目の結果がどうだったのかを聞くことが出来ました。
1度目の試験ではなんと、20人くらいが受けて1人を除いて全員合格したとの事でした!
ガーン!
簡単な方が嬉しいとは言っても、ほぼ全員(Unity認定試験始まって真っ先に受験する人達なんてよっぽどUnityマニア勢だろうという点を差し引いても)が受かる試験なんて、受かっても意味ないじゃないですか!
しかも、前回の最高点は1960点だったそうです。
これはもう満点取る以外にアピールする方法は無いやんけ!
というわけで私の場合はコースウェアも対策講座もやった完璧コースで対策する事にしました。
その結果が1940点です。
満点を狙ってたのにこの結果…前回トップにも負けてるし…不満ですね。
でも今回の試験では私がトップ(退出時点での暫定)だったそうなので良しとします。
しかしじきにみんな満点とか取るようになって1940点なんて恥ずかしくて書いてられないような状況になるような予感はします。
1.Unityに慣れてる人でぶっつけ本番で受験する人
「僕は普段からUnity使い慣れてるからUnityの基本的な問題なんてノー勉でわかるわい」という方、
たしかにそうなのですが、出題のスタイルにややクセがあるので、慣れないでぶっつけだと戸惑って落ちないとも限らない感じがします。
いくらUnityを使い慣れててもエディタの使い方を網羅してるとは限りません。
例えば、普段スクリプトはプロジェクトウインドウ上で右クリックして作成する人が多いと思いますが、インスペクタウインドウ上から新しいスクリプトを作る手順を憶えてるでしょうか?(こんな問題が出るとは言ってない)
クセのある出題傾向を掴むにはやはりコースウェアの練習問題で慣れておくと得点が上がるでしょう。
(コースウェアを売るためにそういう出題傾向にしてるとも言える)
コースウェアも対策講座も受けない人は公式の出題範囲のPDFをダウンロードしてチェックしましょう。
右側の「認定の目的」は130ほどの項目があります。
逆に言えばこれ以外からは出ないので、この130項目を抑えれば大丈夫です。
なんかふわっとしてて意味不明な項目もありますが、ほぼ問題をバラしてるような項目もあるので要チェックです。
私の想像ではこの130項目に1問ずつ問題が用意されていて、その中から100問が試験問題になってるのではないかというような気がします。
さらに言えばその130問は今後当分アップデートされない可能性もあります。
というのも、試験問題の内、半分くらいはコースウェアの確認問題からまんま出題されたのですが、試験問題だけまるっと刷新してしまうと「コースウェア買ったのに役に立たなかった!」という声が上がってしまいますし、コースウェアを刷新するとなると動画撮り直したりなど大変だからです。
コースウェアは恐らくリリースされてから今まで全然更新されてないと思われます。「動画によって音量バランスが全然違う」というような指摘が前から上がってるにも関わらずいまだにそのままになってるからです。
なので今後もしばらくそのままかもしれません。
試験問題が刷新されないとすれば、やろうと思えば完璧な過去問問題集が作成できちゃうだろうし、そういう物が巷に出回って誰でも満点取れるようになるのではないか?
まあ勘ぐりに勘ぐりを重ねても意味無いのでこの話はこの辺で終わり。
2.対策講座を受ける人
対策講座は1,000円払うだけの価値はあるように思います。
やはり試験する側としても、どうせ受験するなら受かってほしいという気持ちがあるのでしょうか。上で試験問題のハックを懸念しましたが、まさにほぼまんま出題されるポイントを教えてくれます。
ただし全てではなく、特に厄介な所や、一回目の試験で躓いた人が多かったところを重点的に教えてくれます。
「こういう所がでます」というだけで答えまではくれないので各自帰ってからチェックする必要があります。
講座終わった後に自由時間(VR体験コーナーみたいなの)があり、そのタイミングで講師の方から情報を引き出そうとしたり、受験者同士で情報を交換しあったりしてる人もいて、そういうのもいいと思います。
3.コースウェア使う人
さっきも書きましたが認定試験の問題の半分くらいはコースウェアの練習問題からまんま出たので、コースウェアやった人はほぼ合格間違いなしな気がします。
金で免許を買うようなもんです。
コースウェアの練習問題は認定試験と同じく、セクションの点数だけ教えてどの問題を間違えたのかも何が正解かもわかりません。
ぶっちゃけ満点取れるまでトライ&エラーするしかないです。
練習問題は絶対全問正解できるようになった方がいいとして、もちろんそれ以外からも出題されるので、満点狙うなら動画もチェックした方がいいです。
私は動画は適度にすっ飛ばしつつ一通り観ました。20時間弱あって全部は観てられません。あと倍速再生できるので1.5倍速とかで観るのがオススメです。
このコースウェアは認定試験の教材でもあり、初心者がイチからUnityを学ぶチュートリアルでもあり、Zombie Toysデモの内容解説でもあるという3つの目的を抱え込んでおり、一石三鳥で優れていると言えば優れていますがかなりどっちつかずの内容で、Unity常用してる人にすると退屈な内容も多いですが、そんな使い方もあったのか!と驚くポイントも結構あります。
以下にそれぞれのセクションの感想を紹介します。(試験とはあまり関係ない)
・01:Unityへようこそ!
→業界情報や雇用情報についてUnity独自の定義が語られる(そして出題される)ので要チェック
・02:Unity Editorのユーザインターフェース
→プロジェクトウインドウでフォルダをお気に入りに入れるのとかへ~と思った。
・03:GameObjectとアセットの使用
・04:プロジェクトとアセットの管理
→飛ばした
・05:実装するアセットの準備
→MayaでUnityゲームに適した3Dモデルやアニメーションの作り方が語られる。非常にためになった。
・06:ゲームステージの構築
・07:ゲームにおけるライティング
→チェックしたけどとくに感想無し
・08:ゲームにおけるライティング
→あんまりライトマップとか使わないので全体的に参考になった。ライトプローブ、リフレクションプローブの設定方法とか。
・09:UnityEditorにおけるGameObjectのアニメーション
→感想無し
・10:ゲームへのアニメーションの導入
→AnimatorOverrideController、こんなのあったのかと思った。
・11:ゲーム開発におけるスクリプト
→私は観る必要無かったけど、初学者にどんな風にC#の書き方教えるつもりなのか気になったので観た。割と流して説明してたので、これでデザイナーさんとかわかるんかな?Resetメソッドは知らなかったのでためになった。
・12:ナビゲーションと毛色探索の実装
→NavMesh Obstacleは使った事無かったのでためになった。
・13:プレイヤーと味方の作成
・14:敵の作成
→これはZombie Toysのデモ解説の要素が強いと思ったのでスキップ
・15:Particle Systemの作成
→この章は3時間以上ある。パーティクルはあまり詳しくないのでセクション1~2はためになったけど残りはデモ解説と思ったのでスキップ
・16:ゲームステージにオーディオを追加する
→Audio Mixerはあんま使った事無かったのでためになった。
・17:カメラとプレイヤー選択システムの構築
→これもデモ解説の要素が強いと思ったのでスキップ
・18:ゲームのユーザインタフェース設計
→知ってる内容だったのでスキップ
・19:ゲームのビルドとデプロイ
→Unityサービス周りは試験範囲なので要チェック
・20:モバイル向けデプロイの準備
→この章は試験範囲外(確認問題も無い)だし知ってる内容なのでスキップ
Unity認定試験のビジネスモデル
最初にも触れましたが、Unity認定試験って自分で問題を作り出し、自分で教材を売るっていうのはマッチポンプな感じがしませんか?
秋葉原で同じ店で盗聴器と盗聴器発見器が売られてた事を思い出しました。
Unity公式だからしょうがないかって感じですね。
Unityを、単にエディタ上でのレベルデザインだけに使ってる人もいれば、モデラーさんが3Dモデルをインポートして見た目を調整するのに使ってる場合もあります。
Unityの扱う範囲が広すぎるという事だと思いますが、それゆえに、Unityできます!と自己申告するエンジニアが実際どれだけできるのか判断する目安になる物が欲しいという採用担当のニーズは確かにあるかもしれません。
Unity開発者認定試験がそのニーズに答えるのかと言えば、否かもしれません。
一通りUnityの機能を網羅はしてますがかなり基本的な内容にとどまっており、この認定を持ってればUnityエンジニアとして充分だとは必ずしもならなそうだからです。(逆にディレクター職やデザイナー職の人が持ってると注目されそうです)
しかしその事はむしろ私は安心もさせました。
だって、もしこの認定が妥当と判断され、簿記資格のように採用の目安として広く積極的に使われるようになってしまったら、むしろ全員受験せざるを得なくなるでしょう。
そうするとみ~んなコースウェア+受験料の43,000円という大金をUnityに上納するハメになります。
だから採用の参考にならないくらいでいいと思ってました。
しかし、何とアメリカでは来年からUnityエキスパート認定試験なるものが始まってしまうのです!!
しかもハッキリと書かれてます。「採用担当はこのエキスパート認定を持ってる人は自信をもって雇えるよ」(逆に言うと今の認定試験はやっぱそうじゃなかったのね)
なんてこった…今やってる認定試験は前振りに過ぎなかった…これからが本当の地獄だ…
最初に始まるのは「 エキスパートゲームプレイプログラマー 」「 テクニカルアーティスト:リギング、アニメーション 」「 テクニカルアーティスト:シェーディング、エフェクト 」の3種類のエキスパート認定で、それぞれコースウェアも準備中だそうです。
エキスパートゲームプレイプログラマーってなんだよ…今のコースウェアでUnity独自見解のゲーム職業が語られたのはこのための伏線だったのか…
これからどんどんあれやこれやとエキスパート認定試験が生み出されて、それが採用の現場での必須資格になっていき、我々は次から次へと認定を受験するハメになって、その度に43,000円を払うハメに…
そしてコースウェアだけでは対応できない難しい認定試験のために、ゆくゆくはUnity運営のUnity専門学校が誕生し…
Unityの利用自体は(個人が普通に使う分には)完全無料化されましたが、その代わりにUnityを仕事で使う人は認定試験受験料をジャンジャンバリバリ貢ぎ続けるハメになる時代がやって来る…?
Unityは全く何もなかったところから認定試験を生み出して、教材を生み出して、強力な利権を生み出そうとしている…!
これがUnity驚異の認定試験ビジネスモデルなのか!
思う事
蛇足です。
コースウェアの確認問題は、例えば「間違ってる物を選べ」という問題で明らかに間違ってる選択肢が2つあるのにどちらかだけが正解判定されて理不尽。みたいな物が混じってて、対策講座でも話題になりました。
モヤッとしますが、実際の認定試験の問題ではあまり無かったのでよかったです。
しかし、認定試験の問題文で結構意味不明な物がいくつかありました。
あれは翻訳の問題なのかもしれませんが、日本語化されてるのはたしかに嬉しいのですが、適宜本来のニュアンスも確かめるために原文も併記されてるともっといいのかもしれません。
Unityのマニュアルは上から下まで全部読む気には中々なれませんが、コースウェアは動画でUnityの機能を一つずつ解説してくれて、例えばColliderの性質の違いがビジュアルで一発でわかるのは素晴らしいです。
Unityマニュアルも全部動画化してほしい。
私の環境だけかもしれませんが、コースウェアは観てると字幕が固まったり動画が固まったり画面が固まったりしてかなりストレス溜まりました。
この認定試験を通じて、自分のUnityスキルが向上したかと言うと、何とも言えないですが、どっちかと言うとUnityの使い方の教え方について学びがあった気がします。
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