UE5のアーリーアクセスが出たぞ!!!!
正直言って、去年に初めてUE5の情報が出た時は「はあ?本当かよ…?」みたいに思ってました。
だって、「無限にポリゴン描画できま~す!」とか、なに頭悪い事言ってんだとしか普通思えないですよ。
「そんな魔法みたいな事が可能だったらみんなとっくにやっとるわい!!!!」という話に尽きます。
完全に半信半疑だったのが、アーリーアクセスで実際に出てきてみたら、Naniteでおおむね宣伝通りに”本当に魔法が実現されていました”。
どうせ誇大宣伝だろと思ってた私はそこで初めてブッたまげたわけですよ。
だって、いくらEpicが凄いって言っても、所詮はゲーム屋です。
普通はゲームエンジンに搭載されるテクノロジーなんて、とっくの昔に研究者がシーグラフで発表した論文の中から目ぼしい枯れたテクノロジーが随分かかってから実装されるみたいなのがせいぜいでした。
所詮はゲーム開発者がガチのCG研究してる人に技術発明で勝てるわけない。そういう空気だったと思います。
だから、EpicがUE5でNaniteとかいう魔法のテクノロジーをいきなり製品レベルで搭載してきたのは常識を覆す事態ではないでしょうか。
これはEpicの技術開発レベルが完全に最先端レベルに到達してしまってる可能性を示唆しています。
ぶっちぎりという事です。
いくらNaniteが魔法のテクノロジーとはいえ、UE5のソースコードは全て開示されてる訳なので、Unityなどの競合ゲームエンジンがパクろうと思えば今からパクれると思います。
しかし、Epicの進歩の速度がぶっちぎりになっているんだとしたら、Unityが必死こいてNaniteをパクり終えるころにはEpicは遥か先を行ってしまってるという事態にもなりかねません。
Epicと競合他社との技術格差はこの先広がっていく一方で、決して縮まる事は無いんじゃないか…そんな事まで予感させるほどにUE5はすごいです。
UE5はNaniteだけじゃなく、完全動的GIを実現するLumenもめちゃめちゃ凄いです。
Lumenさえあれば、もうライトマップなんて一切ベイクする必要無し!美麗な間接光が完全リアルタイムで描画できます。素晴らしい。
ただし、Lumenの方は魔法のような見た事もないテクノロジー…というわけでも無さそうです。
そもそもUE4はボクセルコーントレーシングというLumenみたいな完全動的GI技術が搭載される予定でした。
しかし、結局当時のハードウェア性能ではやっぱりキビしいという判断で見送られていたわけです。
UE5でLumenが搭載されたのは、いよいよハードウェア性能が追い付いたという事でしょう。
たとえばCryEngineにはとっくにSVOGIという完全動的GI機能がありました。
https://simonmajar.com/blog/mNG8/the-need-for-lumen
GodotEngineにもSDFGIというのがあります。
https://godotengine.org/article/godot-40-gets-sdf-based-real-time-global-illumination
ちなみにUnityはEnlightenによるレガシーなリアルタイム?GIしかありません。気の毒ですね。
https://forum.unity.com/threads/update-on-global-illumination-2021.1067015/
↑Unityは2021.1で画期的な動的GIを実装すると約束してましたが、まあいつも通り失敗してしまい(特に驚きはない)、苦肉の策として、非推奨にしてたEnlightenを復活させるそうです。お笑いですね。
UE5はアドしか感じない
私がここで言っておきたいのは、「現在UE5を快適に動かせるようなPCを持ってる人は選ばれた人間」であるという事です。
UE5の「古代の谷」というサンプルデモの推奨実行スペックを見てみましょう。
相当なハイスペックが要求されてますね。
CPUは12コア以上が必須。
メモリは最小32GB~推奨64GB。
グラボはおおむねVRAM8GB以上積んでるようなヤツが要求されてます。
推奨スペックだとフル解像度で実行できますが、最小スペックだと解像度半分にしないとつらいみたいですね。(ちなみにUE5にはTemporal Super Resolutionという超解像技術が搭載されてるので解像度半分でも綺麗に描画されるかも)
ちなみにですが、私のPCのスペックは、
CPU:Ryzen3950X (3.5~4.7GHz 16コア/32スレッド)
メモリ:64GB
グラボ:GTX1080(VRAM8GB)
ストレージ:SSD 1TB NVMe PCI-Express4.0
HDD 10TB
こんな感じです。去年にPCをアプグレした話も記事に書いてます。
さらに余談ですが戌神ころね氏はRyzen5950XとRTX3090を積んでるそうです。
さて、こんなハイスペPCを持ってる人って世の中にどれくらいいるんでしょうか?
そもそも論として、PCを保有してない世帯が日本では3割くらいいるそうです。PCが無ければUE5どうこう以前の問題です。ここで3割の人が脱落します。(家には無くても会社でPC触れる人もいるでしょうが、ゲーム開発会社とかでもない限りあんま会社のPCがハイスペって事は少なそう)
次に、Steamの統計データを見てみましょう。Steam統計はSteamユーザーだけの統計なので、そもそもSteamユーザーってだけで全体の上位1割くらいのPCエリートが集まってると思われる点に注意してください。
まずCPUですが、12コア以上のCPUを積んでる人はSteamユーザーの1.3%くらいしかいません。16コア以上に至っては0.3%ほどです。
仮にSteam勢が全体の上位1割と仮定すると、CPU12コア以上の人は全体の0.13%です。
すなわち、もしあなたが12コア以上のCPUを持ってたら、あなたは760人に1人の超エリート層という事になります。
次にメモリですが、”More than 16 GB”、つまり16GBよりも多くのメモリを積んでる人はSteamユーザーの12.5%しかいません。
グラボについては、VRAMが8GB以上のグラボを使ってる人はSteamユーザーの3割くらいいます。ここはさすがSteam勢。
そういえばtwitterを見てたらストレージが足りなくて古代の谷をインスコできないという方もいるようです。(キャッシュとプロジェクトで合わせて200GBくらい要求される)
それは仕方が無いのでSSDを買い足してください。まあHDDでも動くかも。
さて、現在UE5の推奨スペックPCを所有してる時点で勝ち組の超エリートであるという事がお分かりいただけたでしょうか。
世間のほとんどの人は、推奨スペックが満たせずに古代の谷を動かすことを断念せざるを得ないのです(まあスペック足りなくても動くは動くかもしれないけど。快適ではなくとも)
UE5は自作PCあるいはBTO勢にとっての福音です!
例えばMacを使っていると、その時点で推奨スペックを満たせるようなMacってほとんど無いから脱落するでしょう。(M1MacのCPUスペックは結構高いですが、現状Lumenが動作しないなどの不具合があるようです)
WindowsでもノートPCだと推奨スペックを満たすPCはごく一部では無いでしょうか。ノートPCだとCPUやグラボをアップグレードできないのでPC自体を買い換えるハメになります。
ハッキリ言って今まで自作PC勢はバカにされる事がままあったと思います。
「そんなバカクソでかいPC使っててバカじゃねえのww?クソ高いパーツ揃えて何するわけ?どうせtwitterするだけだろwww!自作PCなんて単なるオナニーなんだよなあ」
まあ、実際にはそんな風に言われてなかったとしても、そう言われてるような気はしていたかもしれません。
自作PCやってるユーチューバーとか見てても、CPUをバキバキにオーバークロックとかしたところで、結局やる事はシネベンチ回してスコア見て自己満するだけだったりします。
実際今までは、一般人がハイスペPCを持っていたところで、活用できる局面は今まであまりなかったという事です。
Unityとかも別にロースペPCで動くし、メニーコアCPUを積んでても全然活用してくれなくてイラッとします。
しかし、UE5は超ハイスペを要求してきて、実際にスペックをしばき倒してくれます!
UE5は例え16コアあってもCPU100%でぶん回して余すことなく有効活用してくれます。タスクマネージャでCPU100%になってるのを眺めるのは自作PC勢の至福の瞬間だと言われてます。(適当)
自作PC勢は今こそUE5をインスコして「俺のPCならこんなにUE5が動いちゃうんだよなあ」とか言ってマウントを取るべき時です!!
スペック不足でUE5が遊べてない大多数の人から羨ましがられる事間違いなしですよ。
パソコンスペックを上げるだけで優越感が得られるだけではなく、”実際に優越できる“機会というのは貴重だと言わざるを得ません。
PCスペックが高いだけで選ばれし人間になれる、私がUE5にアドしか感じないと言ってるのはそういう事なのです。
例えばおめシスのこの動画を観てください。
レイ氏がさっそく嬉々としてUE5で遊んで、古代の谷を実行しています。
レイ氏は最近、ハイスペPCパーツを買い揃えてハイスペPCを組んだばかりです。
自作PC勢というのはこんな風に自分のスペックを見せびらかせるチャンスを虎視眈々と窺っている生き物なのです。
ちなみにUE5は今すぐ触るのが一番アドであるという事も申し添えておきます。
何故ならば、時が経つにつれてみんなのPCスペックもじわじわ底上げされていくので、UE5を触れる人も増えていくと思われます。
何よりも、今はまだPCスペックの重要性に気付いている人は少ないですが、いずれみんな気付き始めると思われます。
アドバンテージというのは、みんなが知らないからこそアドなのであり、みんなが気付いちゃうとこぞってスペックを求めるようになったりして、アドは薄れます。
よって、UE5のアーリーアクセスが始まった今すぐ触るのが一番先行者利益が得られるはずという事です。
数年前にAMDがRyzenを発表して以来、CPUの性能が線形的に向上するという凄まじい時代に突入しています。
つまり、2万5千円払えば4コアのCPUが買えるし、4倍の10万円払えばコア数も4倍の16コアCPUが買えてしまいます。
当たり前でしょ?と思うかもしれませんが、当たり前ではありません。Ryzen以前はたとえば14コアのXeonは1947ドルもしました。
線形的にCPUのスペックがあげられるなら絶対最上位の16コアのRyzen買った方がトクじゃんという事実も気付いてる人はまだまだ少ないようです。(まあ今まではゲーム遊ぶだけとかならマルチスレッド性能よりシングルスレッド性能が問題だったりしたので4コアとかで十分でしたが、古代の谷が12コア要求って事はこれからはゲームもメニーコアがアドになってくのかもしれません)
なんでコア数が多い方がアドなのか?というと、Unreal Engineはマルチスレッドに最適化されていて、ゲームのビルドやシェーダコンパイルなどはコア数が多いほど線形的に処理が速くなっていきます。
つまり、16コアCPUを使っていれば、処理に待たされる時間は8コアCPUの半分近くになったりします。
これは、CPU代を数万円ケチっただけで、人生をドブに捨ててる時間が大幅に増えてしまう事を意味します。こういう面でもハイスペPC勢は時間的アドバンテージを獲得できます。
という訳で、長々と話しましたが、ハイスペPC持ってる人は今からUE5触ると爆アドという話でした。
別にそんな凄いゲーム作る気無いんだけど…という人でも、まあそんな気負わなくても、UE5は適当に触って遊ぶだけでもメッチャ面白いオモチャじゃないかと思いますので、是非触ってみてください。
私も触ってみてます。
ハイスペPC持ってない…という人は今すぐBTOとかでハイスペPCをポチると良いのではないでしょうか。別に損しないと思います。
これからの時代は、パワーのある人ほど大量の計算資源を扱えるし、逆に大量の計算資源を扱えるほどパワーを持てるようになる、計算資源=パワーの時代と言われてます。
どういう意味か?と言うと、例えば高性能なグラボを持ってる人は、仮想通貨をマイニングするだけで儲けられます。これなんかは、計算資源を直接パワーに変換できる良い例ですね。
仮想通貨に限らず、今後は計算資源がパワーに直結するような話が色々増えていくと思われます。
計算資源を手に入れるには、クラウドのAWSを使ったりする手もありますが、自分のPCをハイスペにする方が安くて手っ取り早く計算資源を増やせます。
「スマホでなんでもできるからPCなんて要らないや」という人もいますが、結局のところ、PCにできてスマホで出来ない事はまだまだ多いです。PCだと簡単にできる事をスマホで苦労して手間をかけてやるハメになってるケースもあるでしょう。それはディスアドです。
そういうわけで、私はできるだけ相対的に計算資源強者でいる事をオススメします。
ただ、私が懸念しているのは、ただでさえ今でもグラボがマイニング勢に買い占められて全然売ってないのに、これに加えてみんながハイスペPCのアドバンテージに気付き始めるとハイスペPCパーツの購入が殺到して永遠に入手困難な時代が来るんじゃないかなって心配してます。
というわけで、「ハイスペPC買ってUE5触りたいけど挫折したらお金が無駄になっちゃう」みたいな懸念は不要でしょう。もしそうなったら仮想通貨を掘ればいいだけの話です。
最後に、論旨からズレるので触れてませんでしたが、UE5自体は古代の谷の動作スペックを満たしてなくても普通に動作すると思います。
UE5はUE4と互換性があるので、動作負荷的にも変わらないと思います。
しかし、UE5の新機能を活用し始めるとやはり古代の谷と同様のスペックが必要になってくるでしょう。
UE5を触らないディスアド
UE5の登場は今までのゲーム制作の最適化作業をすべて過去のものにしました。
Naniteで無限にポリゴン描画できるようになったので、3Dモデルのリトポ作業は不要になりました。(ただしスキンメッシュにはNaniteは使えない)
Lumenで完全リアルタイムGIが実現したので、ライトマップのベイクも不要になりました。
UE5のメチャメチャ美麗なデモを観ていると、UE5って大規模なゲーム会社じゃないと使いこなせなくて、個人開発者には関係無いでしょ?とか思う人もいるかもしれませんが、私はむしろ個人開発者への恩恵が大きいのではと思います。
リトポとかライトマップベイクって、ぶっちゃけクリエイティブな作業じゃ無くないですか?
別にやりたくてやってた作業じゃなくて、ハードウェアの制限上、やらないと動作しないから仕方なくやってたってだけです。
Unityなんて綺麗な間接光を表現しようと思ったらライトマップをベイクするしか無いですから、ライトをちょっと調整するたびに延々とベイク待ちするハメになってました。
GPUライトマッパーが登場したおかげである程度高速にベイクできるようになりましたが、シーンが大きくなってくるとVRAMが不足してGPUベイクがコケて、CPUベイクに勝手に切り替わってクッソ待たされるハメになってイラッとします。
ゲームの本質と無関係なこういうワケわからんとこであれこれ苦労させられるハメになってて、当時はそうするしかないからしゃーないと思ってましたが、UE5でそんな苦行から全部解放されるなら、もうUnityなんて触りたいと思いませんよね。
UE5を使えば開発者はゲームのクリエイティブな側面に集中できるというわけです。
ですので、個人開発者も、作業効率とモチベーション維持のためにもUE5がオススメです。
まあ、NaniteやLumenはモバイルは非対応らしいので、必ずしもリトポやベイクから完全開放されるわけではないですが。
映像制作用途でUE4を使ってた人なんかには神の贈り物以外の何物でもないと思います。