最近は出版不況で本が売れないそうで、閉店に追い込まれてる書店が多いそうです。

そんな中でも生き残ってる書店の中には、”本を売らないでも問題ない”本屋があります。

本屋以外の普通のお店なら、先に商品代を払って商品を仕入れるので、商品が売れなければどんどん赤字になります。

しかし、書籍は他の売り物と違って再販制度があります。

出版取次から書店に配本してもらう時にはお金はかかりませんし、売れた本の分だけお金を払えばいい。そして売れなかった本はいつでも返本できます。

ゆえに、大金を払って仕入れた本が売れなくて不良在庫になって大赤字!なんてことにならなくて済みます(岩波文庫など一部の出版社は返本できないのでそうなり得ますが)。本が売れなくても儲けが出ないだけです。

その代わりに書籍は売れても書店の利益は小さくなってます。(粗利益21~24%)

日本ではこの再販制度の前提がある事によって”本を売らない本屋”が成立します。

ヴィレッジヴァンガード 本なんて飾り?

「ヴィレッジ・ヴァンガードで休日を」というビレバン社長、菊地さんの書いたエッセイ本を読んでます。

そういうタイミングで三茶のビレバンを通りかかったので中に入ってウロウロ店内を眺めてみました。

ビレバンは本屋ですが、あんまりベストセラー本とか置いてなく、趣味に偏った本が並んでいて、周りには関連雑貨がギッチリ置かれています。

そうしていて、「あっ、ビレバンって本が売れなくても大丈夫な本屋なんだな」と気付きました。

つまり、ビレバンがお客さんに提供しているのは世界観だという事です。

ビレバンにはテーマ毎にセンスのいいチョイスで書籍が並べられていて、お客さんは書籍をあれこれ立ち読みしている内に世界観に浸ってきます。

そうやって世界観に浸った後は、読んでた本は買わずに置いて、周りの関連雑貨を買っていきます。

ディズニーランドに来た人がディズニーの世界観にどっぷり浸った後にお土産を買って帰る感じです。(実はディズニーランドの売り上げの37%はお土産販売です)

つまりビレバンの書籍は商品というより世界観を盛り上げるための飾りの一部のようなものかもしれません。

そうやって散々立ち読みされた本は売れなかったと言って返本されます。

それは別に問題の無い事です。普通の書店だってやっている事ですから。

しかし、著者が苦労して書いた書籍を使って再販制度にフリーライドして悪用して雑貨販売の金儲けに使っているというような見方もできなくはないかもしれません。

この仮説を裏付けるように、ビレバンの直近の決算資料を確認すると、驚くべき事に、雑貨の売り上げは全体の86%を占めており、書籍はたったの7.8%しかありません。

ただ、菊池さんのエッセイを読んでいる限り、狙ってこのようなビジネスモデルにしたというよりは、とにかく自分の趣味全開の本屋が作りたい!と思って自分の好きな本だけを仕入れたけど全然売れなかった結果、自然とそうなっていったような感じみたいです。

別にビレバンのそういうやり方が悪いなどと言うつもりは無いです。やっていい事の範囲でそういうことができてしまう再販制度の方を見直した方がいいでしょうし、出版不況の現状では本屋は本の売り上げだけではやっていけないのでこんな感じで工夫するしかないという現状でもありましょう。

蔦屋書店

代官山の蔦屋書店に行くと、ビレバンとはまた違った感じでオシャレ風な書籍が大量に並んでいます。

しかも店内にはたくさんソファが置かれていて、お客さんは立ち読みどころか座り読みしてくつろいでいます。

普通の本屋だと立ち読みなんてしてたら下手したら店員さんから怒られますよね。ブックオフでも立ち読みしてたら店員さんが不自然にそばに来て本の整理を始めたりしますよ。それが蔦屋だとどうぞ座り読みしてくださいってなもんです。

それにいざ本を買おうとしてもセルフレジがおざなりに置かれてるだけだったりして、ホントに本を売る気があるのかしらと思ってしまいます。

それどころか、

なんと買っても無い本をスタバに持ち込んで読んでいいというじゃありませんか。

たしかに店内のスタバで本を読んでいる人が一杯いましたが、まさか買わずに持ち込んでるなんて思わずに私なんか最初はみんなそうしてると思って買ってから持ち込んでましたよ。

こんな事が可能なのも、実は代官山蔦屋は本を売る気が全然無いかもしれないんだそうです。売り上げはスタバや周りのテナントからのテナント代で賄ってるんだとか。

つまり、タダで本が読み放題の雰囲気のいい店にお客さんを呼び込む事で、そこのテナントにもお客が来るようにして、テナント代を徴収するという仕組みです。

だからこれも本を売らなくていい本屋です。

代官山蔦屋についてはこちら↓の記事が詳しいです。

夜の歌舞伎町に外国人が殺到する理由

文喫

2018年12月11日に六本木にオープンした「文喫」は、入場料1500円払えば1日居放題で本読み放題、コーヒー飲み放題の”本屋”です。マンガ喫茶じゃないですよ、本屋です。

入場料のある本屋「文喫」は高いのか、安いのか?店内を一足先にレポ

ビレバンや蔦屋にはそれなりに工夫がありましたが、来ましたよ。もう「本を売る気はありません!入場料で儲けます!」って言ってるようなもんじゃないですか。

図書館だって一応書籍を買って本を入荷してますが、こちらは再販制度を使ってタダで仕入れてるというわけです。

もちろん何も悪いことをしてるわけでは無いですよ。しかし、本を書いた著者のみなさん、自分たちが書いた本をタダで読まれまくって儲けられて自分には一銭も入ってこない仕組み見てどんな気持ちですか?

まあ一応本を売ってもいますから、これで沢山本が売れればそれはいいですが、入場に1500円払って入った人が果たして中でまた本を買うのかな…?それなら普通の本屋で買った方がいいと思う。

まとめ

という訳で、最近は本を売らない本屋が出てきたという話でした。

私は別に「こんなズルはやめろ!」とか言うつもりはありません。普通に本だけ売ってても食っていけないという現実がある以上、色々工夫するしかないのです。

逆に、こういう巧妙なビジネスモデルがある事を知って、他の分野とかでも応用する事で、みんなも合法的にできるズルをやって儲けようぜ!と言いたい。

ただ、明らかに自分達の書いた本がいいようにダシに使われてるようなケースは著者が気の毒なような気がします。