ガンダムでシャアが降板させられた理由

”機動戦士ガンダム”において、シャアは自身の復讐のために、ガルマをわざとホワイトベースの前に誘導して撃墜させました。
すると、ドズルは「ガルマを守り切れなかったシャアに責任がある」として、シャアを左遷して前線から外します。
あんまり気にした事が無かったですが、これだとシャアはもうザビ家への復讐が続けられなくなるので、よく考えるとかなりマヌケです。

この時シャアが降板させられたのは、実は番組のスポンサーの意向によるものだったらしいです。

https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1271543482

ガンダムは放送時の視聴率が芳しくなく、5%くらいでした。ちなみに同じ年の”赤毛のアン”は平均16.2%です。

ガンダムのようなアニメは、おもちゃ会社がスポンサーです。視聴率が上がらなければおもちゃは売れず赤字です。
そうなるとテコ入れが考えられます。低視聴率の犯人探しです。
それで「シャアみたいな仮面付けた陰気な男がいると人気出るわけない!」と因縁をつけられた結果、シャアを降板させられるハメになったわけです。

しかし、実は視聴者はシャアの事が大好きでした。「どうしてシャアが出ないんだ!」という手紙がサンライズに殺到して、スポンサーは判断ミスを認めて結局シャアは再登場しました。

さて、このエピソードから分かるのは、スポンサーは視聴者の体験を全く理解できてないという事です。
それにより、よりによって人気キャラを降板させてしまうという完全に誤った判断に至ってます。
だからスポンサーってのはバカなんだ!とか言ってしまうのは短絡的に過ぎるでしょう。本当の問題は、データの不足です。

視聴率というデータは、高いとか低いという事は分かりますが、何故高いのか、何故低いのかという理由はまったく分かりません。
視聴率というKPIだけしか指標が無いのは、データとして解像度が低いと思います。

視聴率を測定する事は、広告効果の判断だけでなく、番組の品質改善にも繋がります。
ガンダムがそうだったように、視聴率が低ければ、テコ入れして視聴率を高めようとします。
番組制作者達が視聴率を稼ぐために努力するほど、我々視聴者は面白い番組が観れるようになります。

しかし、やっぱり視聴率の理由は全く分からないので、番組制作者はデタラメに色々試して視聴率と照らし合わせてみるという実験を繰り返さざるを得ません。
そうしてる内に、たまたま偶然大ヒットした番組が生まれます。
すると、他局もその番組を真似してみる…といった具合です。これも、どうして大ヒットしたのか理由はよく分からないままですから、どこを改善すればもっと良くなるのかも分からないままです。

こんな感じで、”何をすれば上手く行くのか、理由は分からんけどとにかく色々試してみて、たまたま上手く行った所に乗っかる”という手法は、生物が自然淘汰によって進化していく方法に似てます。
生物は、自然選択によって気が遠くなる時間をかけて進化してきました。KPIは生存率だけです。たまたま突然変異して環境に適応できた個体は生存率が上がり、繁栄できます。
とりあえず、この記事ではこのような盲目的な進化方法を、”自然淘汰的進化”と呼ぶことにします。

テレビの話に戻りますが、「本当に視聴率が高けりゃそれでいいのか?」という問題もあります。
ある番組の視聴率が高かったとして、そこでカップ麺のCMを流したとします。しかし、番組を観た人の内、何割の人がCM見てカップ麺買ったのか?というのはまったく測定できません。
という事は、果たしてCMを出して実際トクだったのか、損したのか?それさえもカップ麺企業は判断不可能です。

また、誰がどのくらい番組を観ているのかもハッキリしたデータが取れません。それだと、どんな広告を出せば効果的なのかも分かりません。CMを見せたい相手にちゃんと見せられているかも分かりません。

最近はテレビを観る人、視聴時間が減ってきてます。↓

テレビの視聴時間は若年層から中年層で減少中(2021年公開版)

私が思うに、視聴者がテレビ離れを起こし、テレビというメディアが衰退するとしたら、それは以上で述べたような問題が原因かもしれません。
テレビは電波を使って一方的に放送するだけのメディアです。視聴者のデータは視聴率しかフィードバックされません。それでは視聴者の体験を全然理解できません。
ゆえに、テレビ番組やCMは、盲目的な自然淘汰的進化しかできません。
このようなゆっくりした手探りの進化では、今の時代では遅すぎて付いていけないという事です。

さて、もしも”テレビにカメラが付いていて、iPhoneみたいに視聴者の視線と表情をトラッキングできる”としたら、どうなるでしょうか?
その場合、番組制作者やスポンサーは視聴者全員の感情の変化…つまり視聴者の体験のデータを入手できます。
ガンダムのスポンサーだって、そのデータを観れば、シャアが登場すると視聴者のテンションが上がる事がデータでハッキリ分かりますから、シャア降板という誤った判断をしないで済んだはずです。

さらに、このような体験データさえあれば、番組のどの部分で視聴者が何を観てどう感じてるかが全て分かりますから、後はイテレーションを回せば簡単に視聴者の体験を最適化して、メチャクチャ感動する番組とかを狙って作れるようになるという事です。
これは盲目的な自然淘汰的進化ではなく、データドリブンの”分析的進化”だと言えます。

デタラメに試行錯誤するだけの自然淘汰的進化から、狙って改善できるようになる分析的進化への変化は、天と地ほどの差を生みます。進化のスピードは数十倍、いや数百倍にも達するかもしれません。
このトランセンデンス(超越)とも言える革命的変化に付いていけるかどうかがこれからの時代をサバイブする鍵かもしれません。

他のメディアの場合

テレビ以外のメディアについても考えてみましょう。
例えば書籍です。

紙の書籍は、テレビと同様に一方的な体験であり、ユーザーの体験をトラッキングできません。
売れ行きだけが指標となります。ですから、テレビと同様に自然淘汰的進化しかできません。

ただし、マンガの場合は、単行本になる前に雑誌で連載されます。
例えば少年ジャンプでは、アンケート至上主義を取っており、アンケートで人気が芳しくない作品は容赦なく打ち切りになります。
まだかなり曖昧ではあるものの、一応ユーザー体験に基づいた淘汰が行われてると言えます。
これにより、ジャンプは少年誌の中でも一番人気なポジションを維持できています。

書籍と言っても電子書籍になるとかなり事情が違ってきます。
AmazonはKindleを利用するユーザーからかなり色々なデータを収集してます。↓

AmazonはKindleを通してどのくらいユーザーのデータを収集しているのか?

読者がどんなユーザなのか?ブックマークした位置、読むのを中断した位置、辞書を検索したワード、どこにマーカーを引いたか…などなど。

これだけデータが収集できれば、かなりのユーザ行動が理解できます。
ですからコンテンツの提供者にとっては、電子書籍の方が紙の書籍よりアドバンテージがあります。

とは言え、Kindleが収集したデータを書籍の著者が見れるわけではないですけどね。
Kindleでは広告が表示されるでもなし、Amazonが収集データを何に使ってるのか今のところはよく分かりません。

電子書籍の話で分かる通り、PCやスマホのコンテンツはインタラクションによる双方向性を持っており、つまりユーザの行動データを収集できます。

これは広告に革命をもたらしました。
スマホ広告では、広告の単価(CPM)、何人にリーチしたか、何割のユーザが広告をクリックしたか(CTR)、その内何割が実際に広告商品を買ったか(コンバージョン率)、などの詳細なデータが手に入ります。

KPIとは? Web広告で用いるべき指標と決める手順を解説

つまり、TVのCMでは曖昧だった、「結局この広告って元が取れてるの?」という判断もあっけなくできてしまいます。
そして、色んなパターンの広告を出してみて、効率が良い広告に最適化してくスピードも圧倒的です。

まあ、どうしてこっちの広告の方が人気なのか?という理由は理解できないので、盲目的な自然淘汰的進化である事は変わりませんが、しかしデータが増えた事でその進化速度は圧倒的に高速化しました。

広告の指標が進化したという事は、広告を掲載しているコンテンツ自体もKPIに基づいて高速に最適化されていくことを意味します。
まあKPIを追いかけすぎるあまり、釣り記事ばっかになっちゃうメディアとかもでてくるわけですが…。

最近はWeb広告で不快な内容の広告が多いですが、ああいうのも別に悪意があってやってるわけではなくて、”理由はよく分からんけどこういう内容の広告の方がクリックされるから”やってるだけです。

例えば、プロジェクトメイクオーバーというスマホゲームは、広告詐欺で有名です。
ゲーム本編には存在しない内容の広告を出してますし、その内容もかなり不快です。↓

本編と違う内容の広告を出すなんて、普通に考えてたら思い付かないような事ですが、とにかくKPIに最適化した結果、こういう広告がベストだから理由はよく分からんがとりあえずそうしてるわけです。

TVCMとかに比べると、スマホ広告は進化の速度が速すぎてもはや何だか分からなくなってきてる事がわかります。
広告メディアとしてはテレビはスマホに全く追い付けず、引き離されていってるのかもしれません。(まあこうなってみるといい事か悪い事か分からない面もあるけど)

広告についてはこんなところだとして、コンテンツの話に移ります。
アマゾンプライムビデオやネットフリックスも、Kindleと同様に視聴者の行動データを収集しています。

アマプラやネトフリは、収集した膨大な視聴者行動データを使って何をしようというのか?
それはもちろん、オリジナル作品の制作です。

動画プラットフォーマーは、収集データから、どんな作品が人気でどんなシーンで夢中になるのかまで、すべて把握できてるハズです。
つまり、メッチャ面白い作品からいいとこ取りした、異次元レベルの面白さの作品を制作できるはずです。

私はてっきりそう思ってましたが、実際にこの前ネトフリを観てみたら、「全裸監督」とか、「ドントルックアップ」とか、「ラブデスロボット」とか、「ミッドナイトゴスペル」のような、いいとこ取りとは全然いえない実験的作品を沢山作ってると分かりました。

どうしてビッグデータを活かしてデータドリブンでいいとこ取りな作品を作らないのか?
謎ですが、まだデータを活かした制作のコツが掴めてないのかもしれません。

Amazonも、Twitchから膨大なゲームの体験データを収集して、満を持してオリジナルゲームを作ろうとしてますが、あまり上手くいってないようです。
データ主導でゲームを作ろうとしても頭でっかちになりがちなのかもしれません。
とは言え、Amazonがゲーム制作のコツを掴むのも時間の問題かもしれません。

そういう事を言い出したらじゃあValveはSteamで収集した膨大なデータを自社ゲーム制作に活用してるのか?と言うと、まあ特にそういう感じでも無さそうに見えますね。
ただ、SteamSpyでデータを分析してゲーム制作に生かそうとするデベロッパーは多いようです。

というわけでこれからの時代、コンテンツにおいて覇権を取るのは、ユーザーから大量の行動データを収集しているプラットフォーマーのはずです。
スマホ広告が収集した行動データを利用して爆速で最適化されてったように、動画やゲームなどのコンテンツもデータを持ってる所が一番最適化できるはずです。
今のところそれが上手く行ってないように見えますが、それも時間の問題かもしれません。

ユーザーの体験データを収集できるのは誰か?

スマホ広告や動画プラットフォームは、テレビに比べると、ユーザーの行動データが収集できる分、圧倒的な速度で最適化できるメリットがある事が分かりました。
しかし、ユーザーの”体験”のデータを取るには至ってません。ユーザーが何を観て、どう感じてるかまではデータが取れてません。

前回の記事で、ゲームデザイナーが体験を観察する事の重要性を書きました。↓

これはつまり、体験データを収集して分析せよという事です。

そうすれば、ユーザーの体験を理解してデザインできるようになります。
人気のゲームを盲目的に真似をするのではなく、体験が最適化されたゲームを狙ってデザインできるようになるわけです。

つまり、これからの時代で起きる事は、大量の体験データを分析→最適化→分析的進化へのトランセンデンス という流れになります。
ではこの先、トランセンデンスしてコンテンツを支配するのは一体誰なのでしょうか?

私のような個人クリエイターは、せいぜいゲーム実況動画を観て、一人一人の体験を観察する程度の事しかできません。
これでは時間がかかって効率が良くないです。

任天堂の宮本さんも、ゲームの制作中はプレイテストさせてる人の表情を観察します。これも一人ずつしか観察できません。

一方、EAでは宮本さんの手法をシステマティックに発展させました。
大量のテスターを用意して、アイトラッキングセンサー筋電センサーを装着させた状態でゲームプレイさせて、視線と表情をトラッキングできるようにしました。視線と表情が分かれば、プレイヤーの感情の動きが把握できます。
これにより、大量の体験データを収集する方法が確立しました。
とは言え、社内のテスターの人数分しか収集できません。

おそらく、トランセンデンスを達成できるのは、もっともっと膨大なユーザーから体験データを収集した企業でしょう。
かと言って、一般ユーザーから体験データを収集するなんて事は、普通に考えると無謀です。

「表情と目線のデータを収集させてください」なんて言われて、「いいですよ」なんて素直にユーザーは答えないでしょう。

しかし、実は大量ユーザーからの体験データ収集に王手をかけていた企業がいます。
Appleです。

Appleは「顔認証できて便利だから」とかいう理由にかこつけて、iPhoneにTrueDepthカメラを搭載して、フェイストラッキングできるようにしました。
あとは、こっそりユーザーの表情をトラッキングするだけで、全世界の10億人のユーザーから体験データをドバドバ収集できます!
これでAppleは一気にトランセンデンスに近づく…

と思いきや、Appleは割と義理堅くてユーザーのプライバシーにうるさい企業なので、どうやらユーザの体験データを勝手に収集とかしてないようです。

体験データで覇権取る寸前まで行ったのに我慢してるのは偉いですね。

ザッカーバーグの野望

そういえば、Unityもスマホ広告ビジネスやってます。
何故ゲームエンジンの会社が広告ビジネスやるか?と言うと、つまりUnity使って作られたゲームに広告が出せます。
広告が表示されるのがゲームだと分かってる時点で、当然そのユーザーはゲーム好きに決まってますからラクにターゲティングできるというメリットがあります。

また、ネイティブ広告によって、広告をゲーム体験の一部としてゲーム内に埋め込めます。
これにより、ゲームクリエイター側も、広告収益とにらめっこしながら広告を体験として最適化してくれます。
これがUnityAdsが成功してる理由です。

また、フェイスブックのようなSNSアプリも、ユーザーのプロフィールや投稿内容などから細かくターゲティングして広告を最適化する事で利益を向上させる事ができます。

広告ビジネスでは、こんな風にいかにして他社より広告を最適化できるかどうかが運命を決します。

そんな状況の中、Appleは2021年、IDFAの取得を規制しました。
IDFAとは、端末を識別するための広告識別子です。これが取得できなくなると、すなわちユーザーを追跡できなくなり、広告を最適化できなくなります。

Appleはユーザーのプライバシーに対してやたら義理堅いのでこのような変更を行いましたが、これによりUnityは広告の最適化ができなくなり、UnityAdsの収益は悪化、株価がダダ下がりするハメになりました。

メタに社名を変更したフェイスブックも同様に、IDFAが取れなくなって打撃を受けました。

ユーザーから行動データを収集しまくる事でブイブイ言わせてきたスマホ広告も、AppleやGoogleといったスマホOSプラットフォーマーが規制してしまえばお陀仏です。

話は遡りますが、フェイスブックは2014年にOculusを20億ドルで買収しました。
私は当時、どうしてそんな事するのか理解できませんでした。フェイスブックは陽キャの巣窟、VRは陰キャの巣窟といった感じで、フェイスブックユーザーがVRやるわけでもあるまいし、シナジーを感じませんでした。
ですから私はザッカーバーグはVRというオモチャが欲しくて遊びで買収したのかな?くらいに思ってました。

その後、2021年6月に、Facebookはプライバシーポリシーを変更して、「VRデバイスのデータを広告に利用する」と言い出しました。

FacebookがVRアプリ内で広告を表示させると発表

つまり、「VRアプリ内に広告を出しますよ。そしてユーザーのVRデバイスのデータを広告表示に利用しますよ」という事です。
VRデバイスでのユーザーの行動データは、スマホ上でのデータとは比較にならないほど高解像度です。
ユーザーがVR内でどこを見てるのか、またユーザの感情もボディジェスチャーから推測できるかもしれません。

私は、レディプレイヤーワンというVRを扱った映画を思い出しました。
レディプレイヤーワンではオアシスというメタバースが出てきます。IOIという企業がオアシスを買収して、「VR内に広告を出しまくってやろう」と悪事を企んでます。
Oculusを買収してVR内に広告出しちゃうフェイスブックは、やってる事が悪者のIOIと一致しすぎてて苦笑してしまいました。
映画では主人公がIOIの野望を阻止しますが、現実では誰もフェイスブックの野望を止められません。

さらに、ザッカーバーグは10月に、フェイスブックの社名をメタに改名して、フェイスブックよりもメタバースに注力していくことを発表しました。

フェイスブックが「Meta」に改名。今後10年収益を生まなくてもメタバースに年1兆円投資する本当の理由

フェイスブックはすでに色々な問題を起こしてメディアからボコボコに叩かれてましたし、ザッカーバーグも公聴会に召喚されたりしてました。
フェイスブックが落ち目になってきたので、メタバースに事業転換して巻き返そう!という事でしょう。

私はここに来て、ようやくザッカーバーグの野望が分かってきました。
まず、自社のハードウェアプラットフォームが欲しかったという事があるでしょう。スマホアプリだと、AppleやGoogleの気が変われば簡単に潰されてしまいます。
実際問題、AppleにIDFAを規制された事でフェイスブックはピンチに陥りました。

そしてザッカーバーグは、広告ビジネスでさらなる収益を上げるには、かつてないレベルでユーザーの行動データを収集する必要がある事が分かってました。一番データを収集した企業が勝つわけです。
VRならば、今ユーザが何を見ているか、どんな動きをしているかといった、スマホでは絶対取れないレベルの行動データが収集できますので、データの優位性によって競合他社をぶっちぎりできるかもしれません。

さらにメタバース事業を始めるというのは、今までフェイスブックという2DのSNSをやっていたユーザー達を、メタバースという3DのSNSに移行させようという魂胆です。

そういえば、フェイスブックはARグラスも開発してますが、以前に発表された「Project Aria」は、各種センサーが搭載されていてデータ収集ができるだけのシロモノで、ユーザーが使うメリットが全く見えず、とにかくユーザーからデータ収集したいというザッカーバーグの気分だけが前に出てるシロモノでした。

メタ社がいくらVRユーザからデータ収集すると言っても、逆に言えば頭と両手の姿勢くらいしか取れません。行動のデータは取れても、体験のデータは取れてない訳です。

しかし、メタ社は最近、アイトラッキングや体の姿勢、表情データを広告表示に利用する事についての特許を取得しました!↓

Meta is looking into eye-tracking and product placement to make money in the metaverse

まさしく、ここまで書いたようなザッカーバーグの野望を裏付けています。

そして、Quest2の後継VRヘッドセットである、「Project Cambria」には、やっぱりアイトラッキングとフェイストラッキング機能が搭載されています!!

Metaの次世代ヘッドセット「Project Cambria」のCADデータらしき画像がリークされる

もうお判りでしょう。
ザッカーバーグは新型ヘッドセットを使って、数千万人のVRユーザーから行動データだけでなく、アイトラッキングとフェイストラッキングによる、体験データの収集も行うつもりなのです!

Appleはフェイストラッキングの理由付けとして顔認証を持ち出しましたが、ザッカーバーグはメタバースにはアイトラッキングとフェイストラッキングが必要だよね?という理由を持ち出しました。
ひょっとすると自然にユーザーの体験データを収集できる言い訳のためにメタバース推しを始めたのかもしれないとさえ言えます。

超大量のユーザの体験データを分析すれば、メタ社は体験のコントロールを完全に理解して、分析的進化を遂げるトランセンデンスへと至ります。

メタ社は異次元レベルの速度で広告を最適化できるようになり、収益は爆上がりします。
そして同時に、ユーザーを感動させる体験を生み出すコンテンツを量産できるパワーを手にします。
そして、世界のコンテンツを支配する企業になるでしょう。

Appleはユーザのプライバシーを守るためにデータ収集を諦めましたが、ザッカーバーグは平気でユーザーからデータを奪い取る事をプライバシーポリシーと特許で宣言しています!

というわけで、現在ユーザーの体験データを支配するトランセンデンスに一番接近している企業は、メタ社だと言えるでしょう。

おわり

前回の記事で、ゲームを作るならゲーム実況を観て体験を観察しようみたいな話をしました。

しかし、そんな風にチマチマ体験を分析するよりも、体験データを大量に収集、分析してユーザ体験を圧倒的に掌握してしまう企業が出てくるのも時間の問題です。

つまり、データを収集できるプラットフォームを持っている企業がコンテンツ制作においても断然優位に立つ時代が来つつあります。

今までは、クリエイティブなコンテンツ制作は宮崎駿とかスティーブンスピルバーグといった、個人の才能がモノ言う時代でしたが、これからは企業が持っているデータがモノ言う時代かもしれません。

すでにAIが絵を描くみたいな時代にも突入しつつあるようです↓

最新AIの描く絵が「ヤバすぎ」「個展開ける」と話題 文章から画像を生成する「DALL・E 2」、米OpenAIが発表

後から振り返ると今だけが個人が戦える最後のチャンスだったよね…と言う事態にもなりかねないので、せいぜい今の内に色々やっておきたいところです。

ちなみに、たとえばEmpathという、”音声から人間の感情を測定する”みたいなAPIもあります。
つまり、金さえ無限にあれば大量のTwitchの音声をAPIに突っ込んでユーザーのゲーム体験データを収集、分析するみたいな事もできなくはないでしょう。

https://www.webempath.com/jpn