我々は知らない内に創作の終末へと向かう特急列車に乗せられているのか?

去年の8月、画像AI、Midjourneyが登場した時、これで漫画の背景描けるやんと喜んだ。

そして10月にNovelAIが出てきて、これで漫画のキャラも描けちゃうやんと思った。

12月にChatGPTが出てくると、これで漫画のストーリーも書けちゃうやんと思ったが、もはや喜ぶというよりは恐怖した。

今年3月にGPT-4が出てきて、試しにドラえもんの漫画のストーリーを書かせてみたらクオリティ高すぎて驚愕した。

AI出てきて世の中とんでもねー事になったな。

私は子供の頃から漫画家とかゲームクリエイターに憧れていた。小学生の頃から授業中はラクガキばっかしてたし、高専時代では電算部でゲーム開発をやっていた。

東方やマクロスFで同人誌を描いて出したことがあるが、その時つくづく「マンガ描くのって大変すぎるだろ…」と痛感した。あまりにも描く楽しさよりもしんどさが上回る。漫画家が体を壊しがちというのも当然だと思った。

それからも何となくマンガを描く事を諦めきれずにいた。普通に描くとしんどすぎるから、3Dを活用しよう!と思ってBlenderやUnreal Engineを学んだりしていた。

画像AIのようなテクノロジーが出てくる事は全く予期してなかったが、とにかくこれを使えばラクしてマンガが描けるぞ!と思ったし、実際試したらラクに描けた。

しかし喜んだのもつかの間、これがあれば私に限らず誰だってマンガ描けちゃうじゃんという事に気付いた。

誰もがマンガを描けちゃう世界、一見それは素晴らしく見えるが、それはマンガという技術がコモディティ化するという事だ。 誰でもマンガ描けちゃうし、実際誰でもマンガを描いちゃう時代に、一体誰がわざわざ私のマンガを見てくれるんだろう?

クレヨンしんちゃんの映画、「アッパレ!戦国大合戦」ではしんちゃんは戦国時代にタイムスリップしてしまうが、そこで自分で手紙を書いてみせると周りの人々は感心していた。当時はまだ識字率が高くなく、文章が書けるというだけでスゴかったという事らしい。

現代では誰だって手紙くらい書ける。「手紙を書いたよ!スゴイでしょ!みんな読んで!」と言ってみたところで「何言ってんだ?」ってなるだけだろう。これからはマンガもこのような事態になっていくだろう。

今やStable Diffusionで人間を超えてるようなスゴイ画力の絵を無限に量産できるし、GPT-4なら漫画のコマ割りをSVG出力したり、ハイクオリティなストーリーも描けそうだ。もうじきAIがマンガ全体をプロンプトから一発出しで全部作ってくれる日も近いと予想している。

想像するだけで漫画が作れてしまう時代。まさにドラえもんの「まんが製造箱」である。

「でもゲームはAIには作れないでしょ?」と思うかもしれないが、そんな事は無い。

たとえばAIダンジョンは、AIがその場で続きを生成してくれるテキストアドベンチャーゲームだ。プレイヤーはどんな世界でも自由に冒険する事ができる。

これまで、ゲームというのは遊びたい世界ごとにゲームパッケージを新しく買うハメになっていた。しかし、AIダンジョンならこれだけでどんな世界でも冒険できてしまうのだから、これが主流になればゲームビジネスは崩壊するかもしれない。チェスなどは1度チェス盤を買えば一生遊べちゃうからメーカーは儲からない話と同じだ。

今ではGPT-4でゲームを作って楽しんでいる人もいる。

今はまだテキストだけだが、ChatGPTプラグインでグラフィックスを付ける事も可能になるだろう。いずれは3Dグラフィックスになる日も近いだろう。

今までゲームを作るには、面倒なプログラミングが必要だった。だがそれも必要無くなるかもしれない。GPT-4のようなAIがゲームマスターになって必要な処理を全部やってくれる事も可能だろう。あるいはGPT-4にゲームのプログラムコードを全部書いてもらう事もできる。

プロンプトから3Dモデルを作るAIも急速に進化しているし、Luma AIでスマホ動画からNeRFで3Dワールドを生成する事も可能だ。例えばスマホ動画をあらかじめvideo2videoで変換しておけば、あらゆる世界観のワールドを生み出す事も可能かもしれない。

このようにして、ゲーム制作もコモディティ化されるだろう。

アニメについても、例えばシナリオのプロンプトからアニメを一発出しするAIの研究などもすでにある。

Runwayのvideo2videoモデルGEN-1やtext2videoモデルGEN-2で映画を作っている人たちもいる。

アニメや映画もプロンプトからの一発出し、コモディティ化は免れなさそうだ。

コモディティ化の果てにあるのは?

というわけで、絵もマンガもゲームもアニメも映画も、AIによってコモディティ化されていく運命は免れそうにない事を示した。

とは言え、一夜にしてパッと全てがコモディティ化されるわけではない。iPhoneがじわじわと普及していったように、コモディティ化も段階を踏んで進行するだろう。

つまり、今まで通りの価値観で創作ができるのは、コモディティ化が完了しおえるまでの間だ。それがタイムリミットである。

だから私は焦っている。私はAIでできるようになったからマンガを描こうとしてるわけではない。子供の頃からそれをやりたかったからだ。

AIによってマンガやゲームを作る事が実現できるようになったが、それはマンガやゲームを作っても意味が無くなる事と隣り合わせである。

要するに、私はタイムリミットが来る前に急いで一通りマンガだのゲームだのを作ってしまわなければならない。

イラストについては、あっという間にコモディティ化する事は予測していた。実際、すでにほぼコモディティ化されてるのではないか?イマドキのAIモデルやNijijourneyを使えば、超ハイクオリティなイラストが素人でも無限に生成できてしまう。

ChatGPTが出てくる以前は、私はイラストはすぐコモディティ化されるかもしれないにせよ、漫画はそうならないのでは?と踏んでいた。というのは、絵が描ければマンガも描けるというものでもないからだ。マンガは絵を描くのと同じくらい、ネームを作るのも大変である。

だから、早いとこマンガを描きまくっておけば、ネーム作りも上達するから、そこは人間しかできないだろうから安泰と思っていた。

しかし、ChatGPT、特にGPT-4が出てきてからは、これで漫画のストーリー作りもできちゃうじゃん…と確信した。ネーム作りもAIができるようになって、漫画制作がコモディティ化される日は近いだろう。

コルクの佐渡島さんも、GPT-4でどんなマンガのストーリーでも作れちゃうと言っている↓

AIで80点の漫画が作れるからこそ、「100点」を見極める人間の価値が高くなる!?──『宇宙兄弟』『ドラゴン桜』編集者・佐渡島庸平に訊く「エンタメ業界・うまい飯といい話」第1回

というわけで、マンガ制作もコモディティ化のタイムリミットが迫っている事は分かった。それで、タイムリミットが来たらどうなるって言うんだ?

まず現状について見てみよう。今はAIマンガ制作の黎明期みたいなもんで、やってる人はほぼいない。最初からAIに食い付いていたごく一部のエンジニアとかがやってみせてるくらいだ。つまり、AI技術者が有利な時期だ。

しかし、これから1年もすれば、画像AIは誰でも気軽に自由にコントロールして使えるものになってるだろう。(すでにNijijourneyを使えば誰でも気軽に高品質な絵が出せる)そうなると、AI技術者と一般人の壁は消える。このタイミングで、もともと絵やマンガを描いてた人達が持ち前のテクニックを活かしてAIマンガ制作を始めて、AI技術者を打ち負かすだろう。絵師、漫画家が有利な時期が来る。

しかし、その後ChatGPTがさらに進化していって、完璧なマンガのネームを出力してくれるようになるだろう。というか「マンガ描いて」って言うだけで面白いマンガの完成形を出してくれるようになるかもしれない。それがいつになるか分からないが、例えば3年後とかだろうか。その時点で絵師、漫画家とそれ以外の人達の壁が消えるだろう。

そうなった時に誰が有利になるのか?それは分からない。しかしこれまでのAI技術者や絵師、漫画家とは全然別の人達が頭角を現す可能性は十分あるだろう。例えばお笑い芸人みたいな、その人自体が面白いみたいな人が有利になるかもしれない。TikTokでプロンプト入力してワンポチで漫画動画ができて投稿しちゃうような世界かもしれない。

というか、先ほども書いたが、その段階までコモディティ化が進むとマンガ制作はまったく特別なスキルではなくなっている。手紙を書くとか、ツイートするとか、その程度の事だろう。マンガ描いただけで凄いと思われるような価値観は消失しているだろう。

佐渡島さんが指摘しているが、AIによって日本のIPは崩壊するかもしれない。GPT-4を使えばルフィとのび太が冒険するストーリーだって作る事ができる。つまり、世界中の誰でもどんなキャラクターでもパクり放題という事だ。まんまパクッて販売したら違法だが、消費者一人一人が手元でAI使ってタチの悪い二次創作だってできてしまう。

そうなった時に、IPって何?著作権は形骸化するかもしれない。

マンガはマンガじゃなくなる?

というよりは、その段階まで行くとマンガはもはやマンガの形をしていないかもしれない。

今でさえ、Webtoonがマンガのフォーマットを置き換えるだか何だかという話になっている。Webtoonのようなものの登場は、「スマホで漫画を読む人が増えてきたなら、それに体験を最適化しようよ」という、ごく当たり前の発想で出てきた風潮だ。

それで言えば、マンガというコンテンツは、今まで人間が絵を描く速度にかなり制約があったからこそああいう形に収まっていただけだ。

誰でも1秒に1枚マンガが描けてしまうような時代になれば、まったく違う形に変化していくかもしれない。

マンガの価値というのはコスパよくナラティブと葛藤の視聴を提供してくれるところにあった。そのような体験を最大化する何かしらの方向に変化していくだろう。

例えばマンガは読んでる手元でその場で生成されるようになるかもしれない。登場人物も読者の好みに全てカスタマイズ可能だ。インタラクティブ、マルチエンディングなどのゲーム性も取り入れられるかもしれない。

そうなるともはやメタバースみたいなもんだが、あるいはマンガはメタバース的な世界観を提供するものになっていく…のかもしれない。

佐渡島さんも「ゲームもマンガも、今後ツールが発達して全部ひとつの業界になる」と言っている。

マンガがマンガじゃなくなってしまうとしたら、私の子供の頃のマンガを描きたいという夢はどうすればいいのか?

まあ、マンガ制作がコモディティ化しようが、マンガがマンガじゃなくなろうが、そんな事は一切構わずに旧来のマンガを黙々と制作する事は別に可能ではある。ただ単にみんなに見てもらうのが難しくなるかもしれないというだけだ。

そもそも今でさえコンテンツが溢れかえっていて、我々はアニメや映画を見きれなくて倍速視聴とかしちゃってるのが現実である。ここからさらにコモディティ化でコンテンツが溢れかえったら、一体どうやって消化していけばいいんだろう。

あり得るのは、視聴する方もAIを使って番組の見どころだけをまとめてもらって切り抜き動画みたいにしてもらう流れはありそうだ。クリエイターにとっては悲惨だが。最終的には番組の方もどうせAIに要約されちゃうなら最初っから要約されてる番組を提供してやる!みたいな事になるかもしれない。ひどい話だが、あり得そうだ。マンガも面白い部分だけ切り抜いてレコメンドされたりしちゃうのだろうか。考えたくないが、そういえば今でもtwitterで漫画のページが単体で貼られたりしてるよな。

とにかく急げ!

何やかんや書いたが、とにかく、イラスト、漫画、ゲーム、アニメ、映画製作はAIによって急速にコモディティ化が進みつつあり、タイムリミットが迫っているという事だ。

さらに、これらのコンテンツは制作効率が爆上がる事により、今後急速に変質していく可能性も大いにある。

子供のころの夢だったマンガ制作やゲーム制作を叶えるには本当に今しか無いと思っている。

だから私は相当焦っている。やるなら今しかない。今やらなければ後悔するだろう。

しかし、漫画を描いてみせて、ゲームを作ってみせて、そうしたとしてもじきにAIが追い付いてきてコモディティ化するとしたら意味あるんだろうか?
それは分からないが、今の内にメジャーになっておいて損はないかもしれない。ウイークリー落合で東さんが言っていた事だが、AIがポンとマンガでも映画でも作ってくれるようになったら、一周して”誰がそれを作ったか”が重要になるかもしれない。というのは、誰が作っても面白いマンガができてしまって、どれを読んでも同じなら、その中から敢えて選ぶとしたら自分がよく知ってる人の作品を選ぶだろう。

つまり、ヒカキン氏やひろゆき氏プロデュースのAI制作マンガが人気になるみたいな事態だ。中身の面白さはどれもAI製で大差ないなら、それよりもネームバリューで人気が決まる時代になるかもしれない。

そうすると、そんな時代になるまでに今の内に自分のネームに箔をつけておかなければならないって事になるかもしれない。やれやれ、こんな事考えてるだけで頭が痛くなってきた…しかしまあ、とにかくやっていくしかないだろう。