こんにちは、海行です。

表題の件、ある日気になってググッたのですが、現在進行形で研究が進んでいるためか、イマイチちぐはぐな情報が出てきてしまうので、「エピゲノムと生命」という本を図書館から借りてきて読んでみました。

もし何かしらの形で親の記憶が子供に遺伝するとしたらどうでしょうか?
そうだとすると自分の生き方が生まれてくる自分の子供にダイレクトに影響を与えるという事になります。
自分の健康状態や筋力がそのまま子供に遺伝するとしたら、摂生しようとか筋トレしようという気になって来ませんか?

旧来の生物学のセオリーは、獲得形質は遺伝しないという物でした。
獲得形質と言うのは生まれた後に得た性質、例えば食べ物の好き嫌いとか、筋力とか、本の読み過ぎで視力が落ちたとかです。
獲得形質が遺伝しない根拠は、人間を形成してるのは細胞で、細胞を形作るのはゲノムで、ゲノムは生まれてから死ぬまで不変だからです。
例えるならゲノムは映画のDVDのディスクのように中身のデータは書き換え不能です。

しかし、ゲノムが不変なのに対して、エピゲノムは可変です。
エピゲノムはゲノム内の情報のオン(アセチル化)、オフ(メチル化)のスイッチングを行っています。
このオンとオフでDNAから生成されるたんぱく質を変化させて、結果的に形質に影響します。
この機構により、ゲノムが不変でもエピゲノムによって生物の柔軟な環境適応を可能にしました。
先ほどのDVDの例で言うと、エピゲノムはゲノムの映像を自在にカット、編集できる書き換え可能なメモリのような物です。

ただし、エピゲノムは精子が卵子に受精した際に全能細胞化するために全データが初期化されるというのが定説でした。
つまり、親から子にはやはり獲得形質が遺伝する事はないという話です。

しかし、最近になってこの定説が覆され始めました。

例えば、野生のカブがイモムシに食べられると、段々トゲが生えてきます。(獲得形質)
トゲが生えたカブの種を育てると、最初からトゲが生えているそうです。
まさに獲得形質の遺伝ですね。

他にもオランダの研究で、妊娠中のお母さんが飢饉などで飢餓状態を経験すると、生まれてくる子供が太りやすくなり、さらにその子供の子供(女の子の場合のみ)にも太りやすさが遺伝するという研究結果が出ています。

つまり、エピゲノムのデータ消去は完全ではなく、一部は消されずに遺伝されるという事です。

ちなみに脳が長期記憶を保持する仕組みも大脳皮質や海馬の細胞のDNAのメチル化、アセチル化が関わってるという研究結果があります。

参考リンク:皮質のDNAメチル化は長期記憶を保持する

エピゲノムをUSBメモリみたいにしてデータを書き込んでる感じでしょうか。

獲得形質が一部親から子に遺伝する事実はハッキリしてきてますし、
脳がエピゲノム的な仕組みで記憶保持を行っているからには、精子の細胞でも同じようなシステムが働いて、言葉通りの意味で親から子に記憶が遺伝する可能性もあるかもしれませんね。

ここまで読んでくださってありがとうございました。

参考リンク:
エピゲノム
記憶は遺伝するか2 | 福岡伸一の生命浮遊 | ソトコト:
父親の恐怖の「記憶」が精子DNAを介して子孫に伝えられるとの研究が発表され… – Yahoo!知恵袋: